相場よりも料金の安い税理士は存在しますが、あまりにも安すぎるとトラブルが不安ですよね。料金が相場より安いのには理由があることが多いので、料金が安い税理士を利用する際はいつも以上に注意して依頼しなければいけません。ここでは、税理士の料金の相場や税理士の料金が安く設定されている理由、料金が安い税理士を利用する際の注意点などについて解説します。
税理士の報酬の相場はどれくらい?
一般的な税理士の報酬相場は以下の通りです。
顧問契約(月額) | 記帳代行(月額) | 申告代行(年額) | |
---|---|---|---|
年商1,000万円の場合 | 15,000円~25,000円 | 10,000円〜30,000円 | 60,000円〜150,000円 |
年商1,000万円〜3,000万円の場合 | 15,000円〜30,000円 | 10,000円〜30,000円 | 60,000円〜180,000円 |
年商3,000万円〜5,000万円の場合 | 30,000円~45,000円 | 10,000円〜30,000円 | 120,000円〜270,000円 |
年商5,000万円〜1億円30,000円の場合 | 〜50,000円 | 10,000円〜30,000円 | 120,000円〜300,000円 |
年商1億円〜3億円60,000円の場合 | ~100,000円 | 10,000円〜30,000円 | 240,000円〜600,000円 |
税理士の報酬相場は上記の通りです。これらの相場を下回った場合、安いと定義できるでしょう。この料金は契約料金ですが、契約前の相談の段階でもこれらの料金とは別に「相談料」が発生します。
相談料は30分〜1時間で時間単位で料金が変動するのが一般的です。初回相談無料としている税理士事務所も多く存在しますが、一般的な知識を教えてもらったり、雑談だったりで終わることもあるため、相談料も想定したうえで料金を見積もって下さい。
税理士に安く任せられる仕事は大体決まっている
税理士の独占業務は以下の3つです。
- 税務代理
- 税務書類の作成
- 税務相談
上記以外にも、税理士は会社経営におけるお金の面でのサポートを行っています。業務の例は以下の通りです。
- 資金調達のアドバイス
- 決算書の会計処理・書類作成
- M&A/事業承継のサポート
など。料金が安い税理士は、この中でも特定の業務だけを引き受けているケースがあります。
安い税理士はどうして低価格で利用できるの?
サービス料が安い税理士が料金を安く設定しているのには理由があります。正当な理由で料金を安く設定している税理士もいますが、料金が安い税理士は質が悪いケースも少なくありません。それでは、安い税理士が料金を安く設定している理由について解説します。
引き受けている業務が限定されている
まず考えられるのが、決算や確定申告など、対応業務を限定して依頼を受けているケースです。この場合、記帳代行や税務相談はオプションとして用意されています。税理士の依頼費用が高くなる理由として、税理士に仕事をあれこれ丸投げしていること、プランに不要な業務まで組み込まれていること、が挙げられます。自社で会計ソフトを導入するなど一部の業務を自動化し、申告作業などの必要最低限だけ安い税理士に任せればお得に利用できます。
オンライン対応(訪問なし)
Web通話ソフトやメール、ネットのみなどオンライン対応に限定している税理士も通常より安く利用できる傾向にあります。直接訪問する場合、交通費もかかりますし、移動の時間も必要でしょう。オンラインであればオフィスから移動する必要がないので、交通費も移動の時間も節約できます。その分、対応できる顧客の数が増え、回転率が高くなるので低価格でのサービス提供が可能となります。
クラウド会計ソフトを併用している
税理士事務所の中にはクラウド会計ソフトを併用し、企業側に記帳などの簡単な業務を任せ、確定申告などの業務だけ税理士が担当することで業務効率化を実現しているケースもあります。この場合、税理士側の負担や工数を削減できるので、依頼費用が安くなる可能性もあります。
料金を安くして競合事務所と差別化を図る
特に立地が良くて近隣に税理士事務所が多い場合、顧客獲得のための差別化として他の税理士事務所よりも価格を下げているケースもあります。他の税理士事務所と差別化できるものが料金しかないような事務所の場合、サービスの質が悪い可能性もありますので、事務所の実績や税理士の経歴、クチコミなどをよく確認したうえで利用して下さい。
創業・開業して間もない
創業・開業して間もない税理士事務所は固定顧客がまだ少ないため、料金設定を安く設定していることがあります。創業・開業して間もない税理士事務所は口コミが少ないため、質の良し悪しがわかりづらい可能性があります。事務所長をはじめ所属する税理士の経歴を確認したうえで利用すると良いでしょう。
安いサービスのみを強調している
取り扱う業務の中でも比較的安価なサービスのみを強調して打ち出していることがあります。一般的に、一部の安いサービスのみを強調する事務所は、基本的な税務にもオプション料が発生し、最終的に高額になり安いです。知らない間に法外な料金を取られるなどトラブルに繋がりやすいので、すべてのサービスの料金が公開されている税理士事務所を利用するのがおすすめです。
安い税理士に依頼する際の注意点
料金が安い税理士に依頼する際は、相場程度の税理士と比べてトラブルが起こるリスクが高くなります。そのため、注意点を理解したうえで依頼する必要があるでしょう。それでは、安い税理士に依頼する際の注意点について解説します。
質が悪い可能性がある
料金が安いと、相場通りの料金で運営している税理士と比べて質が悪い可能性が高いです。、料金が安い理由が明確にあれば納得できるものですが、税理士歴が浅くて知識が乏しい、サービスの質が悪いなど安くしないと顧客を獲得できない故に料金を下げていることがあります。この場合、希望しているレベルのサービスを受けられないので、初回相談で相性をしっかり確かめる、口コミをチェックするなどして対策しましょう。
対応範囲・サポートが限定されている
担当する業務を必要最小限にすることで格安料金を実現している事務所も中にはあります。具体的な例では、記帳は自分でやらなければいけない、対応は基本的にオンラインのみなどです。サービスに満足できず解約を希望するとしても、この場合は、契約内容をよく確認していなかった依頼者側に非があることになってしまうため、原則違約金がかかります。顧問契約を結ぶ前に対応業務をよく確認して下さい。
業務を行うのが無資格者の可能性がある
税理士事務所の中には、契約を結ぶまでは所長が対応するものの、その後は税理士資格を持っていないアルバイトなどのスタッフが対応することで人件費を節約する事務所もあります。本来税理士資格を持っていない人が税務代理などの業務を仕事とするのは税理士法に反し、罰金刑や懲役刑に処される可能性があります。そして、依頼者側も参考人として事情聴取を受ける必要があるなど、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
しっかり税理士が税務を行ってくれる税理士事務所を探すためにも、税理士会に登録しているか、税理士証標があるかも重要視すべきポイントです。トラブルを避けるだけでなく、間違いなく税務を代行してもらうためにも、法に則って業務を行ってくれる税理士事務所を選びましょう。
安い税理士に依頼する前に決めておくべきことは?
事前に何も決めずにすぐに税理士に依頼してしまうと、依頼する業務量が多くなり、想定上に料金が高額になるケースもあります。事前にある程度予算や依頼内容を決めておけば、想定以上に費用がかかってしまうようなことも起こりづらいでしょう。それでは、安い税理士い依頼する前に決めておくべきことについて解説します。
税理士に依頼したい業務を事前に洗い出す
まず、税理士に依頼したい業務の範囲を決めましょう。具体的には一通りの業務を専門家に丸投げしたい、コンサルティングだけ任せたい、仕分けなどは自社で行って一部の業務だけ税理士に依頼したいなど。依頼する業務内容を決めておけば、ある程度の依頼費用の相場も把握でき、それによって予算も決めやすくなります。また、業務範囲が決まっていれば依頼する税理士もある程度絞りやすくなるので、税理士選びもスムーズになります。
予算を決める
税理士に依頼する場合は顧問料+オプションとなることが多いです。初回相談の前にある程度予算を決めておいて、税理士と契約する際に必要以上にオプションを付けて予算をオーバーしないようにしましょう。税理士費用が嵩んでしまうと、本業に支障が出てしまうこともあります。
安い税理士の探し方
料金が安い税理士を見つけるにはどんな方法があるのでしょうか。安価に依頼できる税理士の探し方を紹介します。
知人などの紹介を受ける
知人などの紹介で税理士に依頼をすると、身内価格で安く利用できることがあります。知人の紹介であれば安心度も高いでしょう。ただし、知人経由の紹介の場合、断りにくい、トラブルが起こった際に強く出られない、報酬がわかりにくい、価格交渉がしづらいなどのデメリットがあります。そのため、知人に税理士を紹介してもらうなら信頼できる人にだけ紹介してもらいましょう。
税理士会や商工会議所で探す
税理士会や商工会議所に登録している税理士に絞って探すのも一つの手です。価格が安いとは限りませんが、税理士会や昇降合着所に登録しているという点では安心度が高いでしょう。
税理士会を経由して税理士を探すメリットは、条件を絞れる点です。しかし、料金に関しては直接問い合わせないとわからないことがあります。また、商工会議所の場合は最寄りの商工会議所に出向く必要があります。また、必ずしも最寄りの商工会議所に自分が希望する条件を満たす税理士が所属しているとは限らないので、他の手段も併用すると良いでしょう。
インターネットで探す
インターネットの税理士マッチングサービスサイトなどを利用して税理士を探す手もあります。インターネットなら全国にいる税理士を手軽に比較できるのが便利でしょう。ただ、時間をかけずに探せる反面、ニーズに合わない可能性もあります。契約時は入念に打ち合わせをして、こちらの希望と税理士のサービス内容、料金に差異が出ないようにしましょう。
税理士選びで失敗しないためのポイント
料金が安い税理士は、相場価格での税理士と比べてトラブルが起こりやすいです。安さを基準に税理士を選ぶ場合、より慎重に選ぶ必要があります。ここでは、安い税理士に依頼する際に失敗しないためのポイントについて解説します。
税理士事務所の規模にこだわらない
税理士事務所の規模にはこだわりすぎないようにしましょう。規模が小さくて無名であっても質の高いサービスを提供してくれる税理士事務所もあります。逆に、規模が大きくて有名な税理士事務所であっても、サービスの質が悪いケースもあります。特に規模の大きな税理士事務所の場合、経験豊富な税理士から若手の税理士まで幅広い層の税理士が所属しています。ただし、必ずしも希望している業務を得意としている税理士や、経験豊富な税理士が担当になるとは限らず、相談時の税理士がそのまま担当になる場合もあります。そうなることも見越して、実際の相談時にはの税理士の印象や話しやすさ、などを注視しておくと良いでしょう。
報酬の安さにこだわりすぎない
税理士選びの際は報酬の安さにばかり囚われて、サービス内容の質を見落とさないようにしましょう。安さ重視で選んでしまうと、希望しているサービスが受けられない可能性があります。また安い税理士の中には、サービスの質が悪いなど安くサービスを提供していることもあります。
相場通りの税理士に依頼した方がサービスの質はある程度保証される可能性はありますが、契約前に依頼したい業務のリストアップ、依頼したい税理士が対応できる業務内容の最低限の確認は怠らないようにしましょう。
経理代行・記帳代行業者の利用も検討する
決算申告などの代行業務は本人もしくは税理士でないとできませんが、経理や記帳業務は資格が無くてもできます。これらの業務を代行業者に任せて、税理士に依頼する業務を必要最小限に抑えることで依頼費用を安く抑えられるでしょう。ただし、経理代行や記帳代行の仕事が必ずしも正確とは限らないので、経営者がある程度決算など税務に関する知識を身に着けておく必要があります。
税理士選びは安さ以外の面も見て選ぼう
税理士を安さ重視で選ぶと、希望するサービスが受けられないことがあります。税理士の中には決して料金が安くなくても、対応範囲が広い、サポートが手厚い、クラウド会計の導入支援ができる、単なる記帳代行だけでなく会計面のアドバイスをしてくれるなど信頼できる人もいます。また税理士ではなく、公認会計士に相談する選択肢もあるので、依頼したいサービス内容に応じて依頼先を選んで下さい。
記事の監修者
【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】
株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊
中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。