税理士に依頼できる経理業務とは?メリット・デメリットや経理業務を効率化する方法を解説

税理士に依頼できる経理業務とは?メリット・デメリットや経理業務を効率化する方法を解説

自社の経理業務の負担を軽減する方法に、業務代行があります。経理業務の代行先のひとつとして選択肢にあがるのが税理士です。経理業務の効率化を検討している中小企業の経営者や担当者のために、税理士に依頼できる経理業務やメリット・デメリット、経理業務負担を軽減する方法を解説します。

税理士に依頼できる経理業務とは

税務の専門家である税理士のなかには、会計業務の代行サービスを行っている税理士や税理士事務所もあります。自社が依頼したい業務に対応できる税理士を探すために、まずは税理士に依頼できる経理業務について理解しておきましょう。

税理士に依頼できる経理業務は、税理士だけができる「独占業務」と、税理士以外にも依頼できる「非独占業務」のふたつに大きく分けられます。それぞれの業務内容について解説します。

「独占業務」税理士のみに依頼できる経理業務

税理士にのみ依頼できる経理業務が「決算申告の書類作成」および「決算代行」です。売上と経費のデータから法人税や消費税を計算して書類を作成し、税務署に申告を行います。

所得税や法人税の確定申告書類や年末調整などの書類作成は「税務書類の作成業務」、税務署への申告は「税務代理業務」にあたり、いずれも税理士のみができる独占業務に該当します。そのため、経理業務のなかでも「決算申告」は税理士のみが代行できる「独占業務」にあたります。

「非独占業務」税理士以外にも依頼できる経理業務

税理士が提供している代行業務のうち、税理士以外でも依頼できる非独占業務が「記帳代行」「給与計算」「年末調整」「請求書発行代行」「振込代行」の5つです。

記帳業務

日々の業務で発生した収入や支出を取りまとめて、会計ソフトへの入力や会計帳簿への記帳を行う業務です。領収書や伝票をまとめて手渡すことで、税理士が入力や記帳を代行します。

給与計算

毎月の給与計算や勤怠管理を行う業務です。勤務データやタイムカードなど勤務実態が分かるものから勤務時間を入力し手当や控除、各種保険料などを考慮して給与計算を行います。

年末調整

1年間の収入が確定した時点での正確な所得税額を計算し、毎月の給与から天引きされている所得税額(源泉徴収額)との過不足を調整するのが年末調整です。毎年11月〜12月に還付額や徴収額を計算する作業を代行として依頼できます。

年末調整の計算のみなら税理士以外にも依頼できます。ただし年末調整の書類作成や税務署への申請代行もあわせて依頼したいときは税理士の独占業務に該当するため、税理士に依頼しなければいけません。

請求書発行代行

月内の一定のデータを渡し、希望した日に請求書の送付を代行してもらえるサービスです。

振込代行

振込手続きを代行してもらえるサービスです。銀行通帳や印鑑を預かって直接銀行窓口で手続きする場合もあれば、インターネットバンキングを利用して代行可能な場合もあります。

経理を税理士に依頼するメリット

経理を税理士に依頼するメリット

経理業務の負担が大きい、事務作業や書類作成が苦手などの理由で経理業務の代行を検討する中小企業経営者も多いでしょう。経理を税理士に依頼することで、経営面で多くのメリットが得られます。

本業に集中できる

中小企業の場合、経理の担当者を雇用せずに経営者やほかの部門の従業員が経理業務を兼務していることが多いです。経理は毎日行う通常業務に加えて、月末月初、年末などの繁忙期には業務量が一気に増えます。さらに専門的な知識も必要なため、業務負担も大きいでしょう。経理業務を税理士に依頼することで、経営者やほかの部門の従業員も本業に集中でき、健全な経営体制や職場環境が整えられます。

ミスを防げる

経理業務は正確性が求められ、ミスが発生するとやり直し、とスムーズに作業が進められません。専門的な知識を持つ税理士に依頼すれば、税制面からでもミスを防げるでしょう。

経理以外の業務や独占業務を依頼できる

依頼できる業務は税理士によって異なりますが、多くの場合税務や財務領域の業務にも対応している税理士が多いです。たとえば経理業務代行とあわせて、節税対策や税務調査の立ち合いなどの税務領域、資金調達に関する相談やサポートなどの財務領域も必要に応じて依頼ができます。もちろん、税務書類の作成や申請代行、税務相談の独占業務に該当する業務も依頼可能です。

担当者を採用するよりもコストを削減できる

経理業務を任せられる担当者を採用し、育成するのにはコストがかかります。さらに経理担当者の人数に合わせて人件費や社会保険料などの月々のコストも発生します。場合によっては税理士に依頼した方がコストをおさえられることがあるでしょう。

経理を税理士に依頼するデメリット

経理業務を税理士に依頼することで業務面やコスト面などでメリットが得られる一方、デメリットもあります。依頼前にデメリットもおさえておきましょう。

社内の経営状況が把握しづらくなる

税理士へ経理業務のみを依頼し、相談やアドバイスなどを受けていない場合は社内の経営状況が把握しづらくなります。経理業務の知識やノウハウが社内で蓄積されないデメリットに注意しましょう。

契約内容や業務内容によってはコストがかかる

税理士に経理業務をコンスタントに依頼したいときや、ほかの税務や財務に関する相談やサポートを継続的に受けたいときには、顧問契約をする選択肢もあります。顧問契約をすることで税務調査にも強い味方となる、つねに会社の財務や税務が適切な状態で経営ができるなどの多くのメリットが得られますが、月々の顧問契約料がかかります。さらに、顧問契約料にふくまれない業務を依頼する場合には、別途料金が発生することもあるでしょう。

顧問契約料は大きな費用負担となり、企業の規模や財務状況によっては月々の社内の予算を圧迫してしまうリスクもあります。

税理士と顧問契約することのメリット・デメリットや価格相場、注意点について徹底解説

税理士の変更や解約がしづらい

税理士と相性が合わない、思ったような成果が出なかったなどの理由で税理士を変更する場合は、まず契約している税理士との契約を解除する必要が出てきます。ところが、特に顧問契約を結んでいる場合は自動更新などの取り決めがあり、希望する時期までの解約が困難となることがあります。さらに解約通知書を作るなどの手続きも面倒です。口座情報やマイナンバーなどの機密情報も開示しているため、それらの情報を確実に回収しなければいけません。

一度契約をすると、変更や解約に多くの手間や負担がかかるのもデメリットです。

経理業務を税理士に依頼した場合の費用の相場

経理業務を税理士に依頼した場合の費用の相場

経理業務を税理士に依頼した場合、業務内容によって費用が異なります。税理士に依頼できる経理業務ごとの費用の相場を以下にまとめました。

記帳代行:30仕訳まで980円~、100仕訳まで5,000円~、300仕訳まで15,000円~、500仕訳まで25,000円~
給与計算:基本料金20,000円~+2,000円~×従業員の人数
年末調整:基本料金8,000円~(従業員数により変動)+2,000円~×従業員の人数
請求書代行:基本料金1,000円~+郵送料
振込代行:1件あたりネットバンキング480円~、ネットバンキング以外1,500円~

経理を税理士にまかせず内部で対応する方法

経理業務は税理士に依頼することで多くのメリットが得られる一方、費用が多く発生する、解約時に面倒などのデメリットも発生します。税理士の独占業務に該当する業務は税理にしか依頼できませんが、ほかの経理業務は社内で対応することが可能です。本当に税理士への依頼が必要かどうかを考えてから契約しましょう。

経理会計業務を効率化する

現在の経理会計業務に対して大きな負担を感じているとき、人手不足により担当者一人が行う業務量が多すぎる場合には、業務の効率化をするのが有効です。以下の手法でまだ取り入れていないものがあれば、ぜひ導入してみましょう。

  • ネットバンキング
  • クレジットカード
  • 会計ソフト
  • クラウド経理会計ツール

ネットバンキング

ネットバンキングはインターネット上で入金、出金、送金などの手続きができるサービスです。営業時間内に銀行窓口へ足を運ぶ必要がなく、予約振込など業務効率化につながるサービスを提供しているネットバンキングもあります。

利用を開始するには、ネットバンキングを利用したい銀行での口座開設と、ネットバンキングの申し込みが必要です。銀行によってはネットバンキングに対応していないこともあるので注意しましょう。

クレジットカード

クレジットカードがあれば小口入金による手間がはぶけます。法人用のクレジットカードを作り、経費精算を一元化すると会計処理の効率化にもつながるでしょう。ただし盗難や紛失を防ぐためにクレジットカードの取り扱いには十分気を付けることが求められます。

会計ソフト

会計ソフトは経費や給与計算などを効率化してくれるソフトです。自動計算機能や付随する請求書や納品書などの作成機能が付属しています。経理業務の効率化はもちろん、計算ミスの防止にも役立ちます。操作するには基本的なパソコンスキルが必要です。

クラウド経理会計ツール

クラウド経理会計ツールは、クラウド上で経費管理や帳簿入力、請求書発行などができるツールです。以下のメリットが得られます。

  • デバイスを選ばずに経理の処理ができる
  • 経費の承認までのタイムラグがなくスムーズ
  • 出社しなくても会計処理ができる

会計ソフトとクラウド上で連動しているものもあります。ツールによって機能やプラン料金が異なるため、自社にぴったりのものを選びましょう。

代行を活用し経理対応の人材を配置する

専任の経理担当でなくても、経理対応ができる人材を置く方法があります。採用から育成をするまでの時間やコストをかけなくても、すぐに経理業務に対応できるようになるでしょう。経理業務を効率化するための方法を導入する手間が面倒、時間がない、とにかくすぐに業務を依頼したい、というときに向いています。

経理業務の代行方法は、フリーランスにアウトソーシングするか、代行サービスを利用する方法の2種類があります。依頼先が依頼したい業務に対応しているか、機密情報に対するセキュリティはしっかりしているか、費用対効果は得られるかなどを確認してから依頼しましょう。

【予備知識】経理と税務の違い

【予備知識】経理と税務の違い

お金に関する業務を担う「経理」と「税務」は、業務内容も似ているため違いが分からないという人も多いです。さらに「税理士」と似た士業で「経理士」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。自社で依頼したい業務が経理と税務どちらに当たるかによって、適切な依頼先も異なります。経理と税務、さらに経理士と税理士の違いをそれぞれ解説します。

経理と税務の業務内容の違い

経理とは会社のキャッシュフローにかかわる業務を指します。入出金管理や決済対応などが主な業務です。一方税務は税に関する業務で、所得税や法人税の納付に関する書類作成や申請などの業務がメインとなります。

経理と税務のほかにも、企業のお金にかかわる業務に「財務」と「会計」があります。4つの業務内容は異なりますが、とくに中小企業では区分されず、すべての業務を「経理部」や「経理担当者」がまとめて担っていることも多いでしょう。

税理士と経理士の違い

税理士とは、「税務」に関する専門家で国家資格です。税務のプロですが、税理士によっては会社の経理、財務、会計領域に該当する業務の依頼も可能です。たとえばすでに税理士と顧問契約を結んでいるときには、確定申告などの税務に関する業務のほかにも、経理業務に該当する記帳業務や、財務業務に該当する資金調達やM&Aに関する業務も一緒に依頼できることがあります。

経理士は経理実務で必要となる実践的なスキルが身に付く民間資格です。税理士とは異なり士業を指す言葉ではありません。経理士の資格を取得することで、経理実務の実践力の証明とはなりますが、「経理の専門家」というわけではありません。「経理士に経理業務代行を依頼する」というシーンは一般的ではないため注意しましょう。

また、経理士資格取得は経理担当者のスキルアップにも有効です。

まとめ

税理士に依頼できる経理業務やメリット・デメリット、経理業務の負担軽減や効率化につながる方法を解説しました。税理士への依頼は独占業務の依頼をはじめ、さまざまなサポートが受けられる一方、コストや契約に関するデメリットが発生します。税理士に依頼する経理、内部で対応する経理を明確にすることで、理想の経理体制や組織作りにつながるでしょう。

経理業務の代行なら「まるごとバックオフィス」がおすすめです。ご希望に応じた経理業務への柔軟な依頼はもちろん、経理業務をまるごと依頼もできます。また、経理以外の総務や人事、採用活動などのバックオフィス業務の代行も行っています。ぜひ経理業務の負担にお悩みのさいには、ご検討ください。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。