近年、求職者向けに情報を発信する採用サイトを持つ企業が増加傾向にあります。採用サイトに掲載するコンテンツには多くの種類があり、採用サイトの目的やターゲットとする人材に合う種類や手法を選ぶのが重要です。この記事では、採用サイトに掲載するコンテンツの種類の具体例、設計方法を採用サイトでの採用活動を成功させるポイントとともに解説します。
採用サイトを作る目的
採用サイト(リクルートサイト)とは、企業が求職者へ採用に関する情報を伝えるための専用Webサイトです。求職者が応募に関して知りたい情報がまとまっている、自社メディア(オウンドメディア)の一種となっています。
採用サイトを作成することで、以下のメリットが得られます。
- 求職者向けのアプローチができる
- 採用ページやSNSよりも発信できる情報が多い
- 自由なコンテンツ配置やデザインができる
- 転職サイトやSNSからリンクを張り、誘導できる
企業サイト(コーポレートサイト)では顧客や取引先などの関係者(ステークホルダー)向けの情報を発信します。採用サイトは求職者向けの情報を発信するため、企業サイトとは異なるアプローチが可能です。
サイト内で掲載できる情報量も多く設計の自由度も高いことから、より求職者へ自社の魅力や強みを発信できます。採用サイトを通じて応募エントリー数の増加や自社が求める人材の採用にもつなげられるでしょう。
効果的な採用活動につながる採用サイトのコンテンツ設計の方法
採用サイトに設置するコンテンツは、幅広い種類があります。求職者への効果的なアプローチにつながるコンテンツを厳選して配置することで、自社が求める人材の採用にもつながるでしょう。
採用サイトに掲載するコンテンツをどのように設計するか、流れに沿って解説します。
採用したいターゲットを設定する
どんな人材を採用したいかを明確にするために、以下のペルソナも活用しながらターゲット設定を行います。
- 年代、学歴・職歴(新卒か中途か)
- 必要なスキル、スペック
- 行動パターン、趣味、特質、ライフスタイル、人間関係など
ペルソナを活用したターゲット設定をすることで、特定の人物をイメージしながらコンテンツ作成ができたり、採用関係者間で訴求したい求職者像の共有ができます。
採用サイトの目的を明確にする
採用サイト作成の目的は企業によって異なります。以下のポイントをふまえて採用サイトの目的を明確にすることで、掲載すべきコンテンツの方向性を把握できるでしょう。
- 新卒採用が目的
- 中途採用が目的
- エントリー数を上げる
- 応募者の質を上げる
- 入社後のミスマッチやギャップによる早期離職を防ぐ
- 自社の認知度を上げる など
ターゲットと目的に合わせたコンテンツを設計する
設定した目的達成や、ターゲットとした求職者が求めるコンテンツを設計していきます。たとえばターゲットは新卒採用者で、目的が自社の認知度を上げることなら、以下のようなコンテンツが適切となるでしょう。
- 「経営方針・事業戦略、勤務地、具体的な仕事内容、社風・企業文化」などの自社情報を伝えられるコンテンツ
- 「初任給、有給休暇の取得日数・取得数、所定外労働時間(残業など)の実績、福利厚生」などの待遇や条件を伝えられるコンテンツ
- 「社内の人間関係、オフィスの様子」など採用後のイメージができるコンテンツ
見やすさやターゲットが魅力を感じるサイトデザインに落とし込む
掲載するコンテンツが決まったら、採用サイトの見やすさやターゲットへの魅力訴求ができるように、サイトデザインに落とし込んでいきます。コンテンツをサイトデザインへ落とし込む上でのポイントは以下の通りです。
- もっとも伝えたいメッセージはもっとも見やすい場所にする
- 事業や業種に関連するデザインを入れる(クリエイター系なら前衛的、IT系ならスタイリッシュにするなど)とSNSでシェアされやすい
- コーポレートカラーがあればデザインに取り入れる
- トップから各ページに移動しやすいデザインにする
- 応募ボタンなど、ボタンは押しやすいデザインにする
次に採用サイトに掲載する具体的なコンテンツを、種類ごとに解説していきます。
採用サイトに必ず設置すべき4つの必須コンテンツ
必須コンテンツとは、採用サイトに必ず設置すべきコンテンツです。以下のコンテンツが必須コンテンツにあたります。
- 募集要項
- 選考フローまたはステップ
- 応募方法
- 会社概要や企業情報
それぞれのコンテンツの内容を順に解説していきます。
募集要項
自社が求めているターゲット人材へアプローチするために、募集要項を明確にする必要があります。募集要項では以下の項目を記載しましょう。
- 募集している職種
- 想定される業務内容
- 募集条件(年齢、経歴、スキル、人物像など)
採用サイトは採用ページやSNSよりも多くの情報を記載できます。募集要項でも、入社後のイメージがわきやすいように具体的に内容を明記しましょう。また複数の職種を募集している場合は、職種ごとに募集要項を分けることで求職者にも必要な情報を伝えられます。
選考フローまたはステップ
応募してから採用までの具体的な流れを記載します。選考フローやステップを明示しておくと、求職者が就職活動のスケジュールを組みやすくなるため、応募の増加が見込めるでしょう。選考フローやステップは特定のものがなく応募者に合わせて変更する場合にも、基準となる選考フローやステップを例として記載しておくと親切です。
応募方法
応募方法には、以下の項目を記載します。
- 受付方法(電子メール、応募フォーム、紙書類の郵送)
- 必要書類
- 宛先(メールの送付先、履歴書の送付先など)
- 締切日
Webで完結する応募方法を取り入れれば、求職者が採用サイトを閲覧後そのまま応募につなげることも可能です。一方で、シニア層などのネットリテラシーの低い層の応募も見込まれるなら、紙書類での郵送も受け付けておくと良いでしょう。
会社概要や企業情報
採用サイトを企業サイト内に作っている場合、採用サイトのコンテンツとして会社概要や企業情報は記載しておくようにしましょう。前述通り企業サイトに記載している情報は顧客や取引先などのステークホルダーに向けたもののためです。求職者向けとして会社概要や企業情報を掲載すると企業サイトとは異なるアプローチができ、採用ブランディングにもつながります。
採用サイトのコンテンツとして記載する会社概要や企業情報の項目は以下の通りです。
- 社名(振り仮名・英語表記付)
- 代表者名(代表挨拶をコンテンツにするならここに記載しても可能)
- 本社所在地、各拠点の住所
- 創業年度
- 企業の沿革(簡略化する。長い場合は別ページに分ける)
- 資本金
- 事業内容(詳細は別ページにて紹介)
- 主要取引先
- 従業員数
- 面接地や勤務地へのアクセス情報(Googleマップとリンクさせるか、駅からの道順を載せる)
求職者からニーズのある8つのコンテンツ
入社後の具体的な働き方や、働いているイメージが高まるコンテンツは求職者からの応募獲得の確率が高くなりやすいです。以下のようなコンテンツを採用サイトに取り入れると、求職者が採用後のイメージをつかみやすく、応募につなげられる可能性が高くなるでしょう。
- 会社・事業のビジョン
- 代表メッセージ、代表挨拶
- 社員インタビュー、社員紹介
- 1日の流れ
- 待遇・福利厚生
- 入社後のキャリアパス
- 研修制度
- よくある質問、FAQ
会社・事業のビジョン
企業の未来や将来、事業の方向性を提示したビジョンやミッション(企業によってはクレド、行動指針、事業方針、バリューなどの言葉を使っている場合もある)を記載します。自社のビジョンやミッションに共感した求職者から応募が来ると内定率が上がり、採用されれば入社後帰属意識やモチベーションが高い状態で活躍が期待できるなどのメリットがあります。
採用サイトに記載するビジョンやミッションは、分かりやすく、具体的な言葉で表現するようにしましょう。社内で共有しているビジョンやミッションのイメージは、外の人から見ると分かりにくいためです。目標の数値や実績など、具体的に提示できるものがあれば一緒に記載しましょう。
代表メッセージ、代表からの挨拶
企業としての考え方を知ってもらう、または自社に応募者からの親近感や共感を得てもらうために有効なのが、代表メッセージです。企業の姿勢や考えを表すコンテンツにはビジョンやミッションも該当しますが、代表メッセージは人が言葉で伝えるコンテンツのため、より応募者の共感を得やすいのが特徴です。
代表メッセージもビジョンやミッションと同じく、具体的な内容を明記しましょう。求める人材、会社の未来、入社後どのように成長できるかなど、入社後の具体的なイメージをしやすい内容がおすすめです。なお代表メッセージは別ページに記載しても、会社概要コンテンツに含めても問題ありません。
社員インタビュー、社員紹介
実際にどんな人が働いているかのイメージを持ってもらうためのコンテンツです。募集している職種の先輩社員のインタビューや紹介から、役員メンバーなど経営層の紹介まであります。ターゲットに合わせて複数のコンテンツを用意すると良いでしょう。
現場の社員インタビューや紹介なら、具体的な仕事内容、入社のきっかけ、将来の目標など現場ならではの内容を入れることで、求職者の共感や入社後の働くイメージを得やすいです。役員メンバーなどの経営層のインタビューや紹介なら、企業の経営にかける熱意など代表メッセージとは違う切り口で企業の考え方や方向性を伝えられます。
1日の流れ
募集している職種の先輩社員の出社から退勤までのスケジュールを時系列で紹介するコンテンツです。社員インタビューや社員紹介と同じく、入社後実際に働いているイメージを持ってもらうためのコンテンツと言えます。
待遇・福利厚生
待遇や福利厚生は応募先企業選びの指標として使われるだけでなく、明記しておくことで、求職者が自社で働く上での不安要素の解消にもつながります。以下のような待遇、福利厚生について記載しましょう。
- 雇用保険や労災保険などへの対応
- 働き方を支援する福利厚生
- 近年注目されている働き方(副業、テレワーク、時短など)
- 育児中の社員に対する福利厚生
- 会社独自の福利厚生制度(住宅手当、スポーツクラブの利用割引、無料の社員食堂など満足度の高いものを紹介する)
- 有給休暇の消化率
- 育児休業の取得者数
テキストでの説明だけでなく、消化率や取得者数などの数値によるデータを記載するとより信憑性が高まります。
入社後のキャリアパス
自社の従業員が形成したキャリアや選択肢を提示することで、応募者が入社後のキャリアイメージを抱きやすくなります。キャリアパスを複数提示すれば、入社後の職種ややりたいこと、将来のビジョンなどに合った道すじを選べるため、現在具体的なキャリアをイメージできない求職者の安心感にもつながるでしょう。新卒、既卒(転職者)とターゲットに合ったキャリアパスをコンテンツとして提示します。
キャリアパスでは肩書や役職を羅列するのではなく、業務から学んだこと、将来活かせること、入社後の活躍イメージなどの内容を含め、キャリアパスを紹介する従業員本人からの声も掲載しましょう。
研修制度
とくに新卒社員や未経験からの転職者が気になるポイントが研修制度です。入社後どのようなフォローが受けられるかだけでなく、継続して学べる環境が整っていることをアピールしましょう。以下のような具体的な研修制度を記載します。
- 新入社員向けの研修制度
- 新卒フォローアップ研修
- 既存社員に対する研修制度
- 特定業務に関する研修制度
- スキルアップ研修 など
よくある質問、FAQ
採用にあたって求職者の不安や疑問点を払しょくするために効果的なコンテンツが「よくある質問」です。過去の内定者や現場の従業員に「採用活動前に抱えていた不安や質問はないか」などのアンケートを取り、結果を質問と回答にすると良いでしょう。よくある質問の内容は以下の通りです。
- エントリー方法について
- 選考方法や期間について
- 産休、育休制度について
- 転勤の有無について
- 休日や残業について
- 働くやりがいについて
- 上司や同僚などの人間関係
- 社風について
他社と差別化がはかれる4つのコンテンツ
採用サイトに掲載するコンテンツは必須ではありませんが、自社の魅力を配信することで他社との差別化がはかれるメリットがあります。おすすめのコンテンツは以下の通りです。
- オフィスツアー
- 写真ギャラリー
- 動画
- 座談会
オフィスツアー
新入社員は入社後1日のほとんどの時間をオフィスで過ごすことになります。オフィスの様子が分かるコンテンツとしてオフィスツアーを用意すると良いでしょう。写真や動画を使い、オフィスの環境や雰囲気、働く従業員の様子が伝わるコンテンツにすることが重要です。
写真ギャラリー
企業の魅力や採用に関する情報を自由に発信できる採用サイトは、テキストだけでなく写真で情報を伝えられるコンテンツも用意できます。たとえば企業の歴史として年表と一緒に社屋の写真を用意したり、自社製品や商品、サービスを写真とともに説明したりなど、ギャラリー風にコンテンツを作ると求職者に効果的なアプローチができます。
動画
静のコンテンツだけでなく動のコンテンツも採用サイトには掲載可能です。インタビューやオフィスツアーなどのテキストよりも動画で伝えた方がより多くの情報をリアルに伝えられるコンテンツは、動画で作成し、掲載してみましょう。
座談会
従業員同士の会話コンテンツが座談会です。フランクに社風や業務内容、キャリアパスなどについて話すことで、職場の雰囲気や自社の魅力を伝えられます。
採用サイト制作を成功させるポイント
コンテンツを企画後、それらを掲載し、採用サイトを制作後、公開しても「閲覧者が少ない」「応募までつながらない」「求めている人材が採用できない」など採用サイトの成果がうまく発揮できないことがあります。採用サイトを活用して採用活動を成功させるためのポイントを、採用サイト制作前にふまえておきましょう。
第三者目線で制作に取り組む
採用サイトは、求職者が求める情報を発信する目的で制作されます。そのためには、採用ターゲットとして設定した求人者の目線から採用サイトを作ることが求められます。求職者が求めている情報と会社が伝えたい情報の間に、ずれが生じてしまうためです。自社が求めるターゲットへ的確な情報を届けるためには、第三者目線を持って採用サイト制作を行う工夫や取り組みが必要になります。
制作実績の高い企業やサービスへ依頼する
自社内で採用サイトを制作できる人員やスキルが不足している場合には、採用サイトやコンテンツ作成を外部へ依頼することになります。ただし、外注するときには企業が求めるターゲットや目的に合わせた採用サイト制作ができる依頼先を選びましょう。万が一、自社と依頼先とで採用サイトに関する認識が違っていると、イメージと異なる採用サイトとなってしまう可能性もあります。
採用サイト制作に関して実績の高い企業やサービスなら、採用サイト制作のスキルやノウハウも多く蓄積しています。自社の求めるターゲットや目的に応じた、採用サイト制作につながるでしょう。
定期的にPDCAを回す
採用サイトは一度作って終わりではありません。定期的な分析や改善を繰り返すことで、より効果的な採用につながる採用サイトの構築につながります。採用サイトのコンテンツ設計やデザイン、目標やターゲットの設定(Plan)、採用サイトを通じた採用活動の実施(
Do)、効果測定と課題の検証(Check)、効果や課題をふまえて採用サイトの改善や見直しにつなげる(Action)のPDCAサイクルを定期的に回しながら、採用サイトの運用にあたりましょう。
採用サイトのコンテンツ作成をはじめとした採用活動なら「まるごとバックオフィス」
採用サイトのコンテンツ設計やサイト制作のための依頼先としておすすめなのが「まるごとバックオフィス」です。さまざまな企業の採用活動業務を担い、蓄積した経験やノウハウ、スキルによって、目的や企業が求めるターゲットに合わせた採用サイトのコンテンツ設計やサイト制作を実現します。また、コンテンツやサイトの分析、改善、運用や管理などの業務も依頼可能です。
採用サイトやコンテンツ制作だけでなく、採用活動そのものをまるごとお任せすることも可能です。「早期離職やミスマッチが続く」「採用活動を担える人手不足」「採用に関するノウハウがない」など採用業務の課題解決に、ぜひ活用してください。
まとめ
採用サイトの必要性や採用サイトコンテンツの設計方法、種類、採用サイト制作を成功させるポイントを解説しました。採用サイトに掲載するコンテンツは、目的やターゲット、求職者が求めているものなどを踏まえて適切なものを設計、掲載するのが重要です。また、採用サイト作成後も分析や改善を繰り返しながら採用サイトを運用していくことになります。採用サイト制作やコンテンツ設計のチームを実績の高い依頼先に外注するなどして、自社の採用活動の成功につながる採用サイト制作やコンテンツ設計につなげましょう。
記事の監修者
【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】
株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊
中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。