事務の業務量が増え、人員リソースが必要になったときや、事務の効率化を図りたいときにはフリーランスの活用が解決策の一つです。事務代行をフリーランスに依頼するとどのような業務を任せられるのでしょうか。依頼するメリットやデメリット、契約時の注意点と併せて詳しく紹介するので参考にしてください。
フリーランスが企業に代わり事務を代行
フリーランスや代行業者に依頼をして業務効率化やコスト削減を目指す傾向が高まりつつあります。デザイナーやエンジニアのような専門性の高い職種や業務だけでなく、事務についてもフリーランスを活用する事例が増えてきています。
書類の整理や社内資料作成などの簡単な事務作業をフリーランスに代行依頼する方法がよく選ばれています。バックオフィス業務にかかる人件費を下げてコスト削減を目指す企業が多くなり、フリーランスによる事務代行の需要が高まっているのが現状です。事務の業務量の増加に伴い、即戦力として対応できる人材の獲得方法としてもフリーランスが注目されています。
フリーランスは期間を設定して契約することもできるため、育児休業など一時的に事務担当者が減ったときの人員補充としても利用可能です。また、フリーランスの人材が経験してきたノウハウを現場に取り入れられるという期待もあり活用が進められています。
フリーランスに外注できる事務の仕事内容とは
フリーランスに対しどのような事務業務を外注できるのでしょうか。フリーランスに依頼できる一般的な事務の仕事内容について簡単に確認しておきましょう。
会計・経理関連の事務
会計・経理関連では発注書、領収書、納品書などの作成や発行、受領した書類の整理と保管などといった書類関連の業務をフリーランスに依頼できます。また、日々の経費精算や帳簿の作成なども依頼可能です。依頼先によっては年末調整や確定申告なども任せられます。
人事・労務関連の事務
人事・労務関連業務では勤怠の集計作業や給与計算、社会保険の手続きなどを依頼できます。フリーランスに社内研修や社外研修の企画やスケジューリングを任せることも可能です。ハラスメント相談やストレスチェックなどの担当者として起用することもできます。
採用業務関連事務
採用業務関連では求人票の作成や採用関連会社とのやり取りを任せたり、応募の受付や面接日程のスケジューリングを担当してもらうことが可能です。また、応募者リストの作成や審査書類の整理、面接官向けの資料作成などを依頼することもできます。
フリーランスに事務を外注するメリット
フリーランスに事務を外注すると得られるメリットは3つあります。それぞれについて詳しく解説していきます。
社員がコア業務に専念できる
フリーランスに事務を代行してもらうと、社員がコア業務に専念できる環境を整えられます。本来なら専門的な業務に時間を費やすべきであったとしても、書類を整理したり電話を受けたりするのに時間を取られてしまって専念できない場合があります。単純な事務作業はフリーランスに依頼すると社員がコア業務で活躍できるようになるでしょう。
直接雇用よりも人件費・固定費を抑えられる
事務の担当者を直接雇用するよりもフリーランスに外注した方が、人件費も固定費も抑えられます。直接採用には求人サイトの掲載料や人材紹介会社の報酬、さらに給料や社会保険の支払いも必要です。フリーランスなら業務委託契約なので社会保険の負担はありません。また、フリーランスは即戦力になるため、直接雇用をして新しい人材を育てる労力や時間も削減できます。
スキルや専門知識の高い人材に依頼できる
フリーランスの人材は事務の業務経験を積んでいて高いスキルやノウハウを持っています。経験を強みにして契約を勝ち取っているのがフリーランスの特徴です。事務を外注すれば独自のスキルを発揮するだけでなく、ノウハウを取り入れて作業効率化を進めてくれるでしょう。ただ、人によってスキルに違いがあるので、契約前に十分に確認するのが大切です。
フリーランスに事務を外注するデメリット
フリーランスに事務の仕事を外注する方法にはデメリットもあります。安易にフリーランスで事務担当者を揃えてしまうと失敗するリスクがあるので、以下の3点に注意しましょう。
人材が育ちにくい
フリーランスに事務を依頼すると社内の人材が育ちにくくなるのがデメリットです。外注で完全に任せきりにしていると、依頼している事務作業を社内の誰もできない状況が生まれるリスクがあります。社内の人材に業務を教えることも依頼内容に含めると良いでしょう。
コミュニケーションが取りにくい
コミュニケーションが取りにくいという問題も起こり得ます。書類作成などの業務はリモートでも対応が可能なので、コミュニケーションを怠ってしまいがちです。完成した書類が意図と違っていたというトラブルが起こり得るので、定期的に連絡を取って意思疎通を図りましょう。
継続性・確実性にリスクがある
フリーランスに外注すると継続的に対応をお願いすることが難しいケースや、確実に業務を行なってもらえないというリスクがあります。病気や怪我で一時的に仕事ができなくなるケースは誰でもあり得ますが、急に事務担当の人がいなくなり、継続的に仕事をお願いする人がいなくなるとその後の対応が困難です。リスクを予期して、ある程度は自社でカバーできるように業務内容や契約内容を把握しておくなど、管理を行うことが重要です。
フリーランスへ事務を外注する前に社内で用意しておきたいこと
フリーランスへの外注では事前準備をしておくとスムーズで失敗がありません。契約開始から業務を遂行してもらうまでの流れの中で、重要な2つのポイントを押さえておきましょう。
契約書とNDA
フリーランスに事務代行を依頼するときには契約書とNDAの締結が必要です。契約書はお互いが負う義務や責任についてまとめた法的書類です。フリーランスとの契約では業務内容や範囲、業務場所、業務時間、報酬などについての取り決めをしておく必要があります。
依頼する事務の仕事内容や業務範囲を明確にすることで齟齬がなくなります。場所や時間も拘束するか、自由にするかは契約によって決めることが可能です。報酬については支払い期日についても明確にしてトラブルが起こらないようにしましょう。
NDAは秘密保持契約のことで、業務中に知り得た内容について外部に漏洩させない目的で締結します。事務では企業の機密情報や顧客情報、社員情報などに触れる可能性が高いのでほぼ必須の契約です。
ルールやマニュアル
フリーランスに業務を遂行してもらう上でルールやマニュアルを作成しておくのも重要です。契約書に記載した業務内容や業務範囲に基づいて具体的な業務をマニュアル化しておくとスムーズに業務を始めてもらえます。また、社内の人材とのコミュニケーションが必要な場合には誰が担当するのか、社内担当者が何をするのかも明確にし、マニュアルを整えておくと今後ずっと活用していくことができます。
契約前にフリーランスに確認しておくべきポイント
フリーランスと契約をする前に価格とクオリティについては十分に確認しておきましょう。事務代行のフリーランスとして経験がある人なら、自分なりの報酬相場を持っています。事務にかけられる予算に応じて報酬限度額を明確にしておき、価格交渉をする用意をしておくのが大切です。先に報酬の希望を聞くようにするとスムーズに交渉を進められます。
また、クオリティについては事務の経験、過去の実績について説明してもらうのがわかりやすい方法です。面談までのメールなどによるやり取りでレスポンスの早さを確認したり、契約前の面談でビジネスマナーがあるかをチェックしたりして納得して依頼できる人材かどうかを見極めるのも大切です。
フリーランスに事務を外注した場合の価格相場
フリーランスに事務を外注するときの相場は業務内容によって異なります。クラウドワークスで依頼をする場合には資料作成で15ページ程度の依頼をするのに30,000円以上というのが相場です。ランサーズではパワーポイントの作成が10ページあたり30,000円〜100,000円、エクセル作成が30,000円〜50,000円が相場になっています。
また、現場に常駐して作業してもらう場合などには時間単価で契約することもできます。例えば、クラウドワークスでは事務業務として経費精算や請求書対応などの担当について時給1,000円以上が相場です。月額1万円で10時間の契約が最低ラインになります。専門性の高い業務を依頼するときには時給5,000円以上の場合もあります。依頼したい内容や依頼先のフリーランスのスキルと経験によって異なる点には注意しましょう。
フリーランスに事務を外注する際の注意点
フリーランスと契約をして事務を外注するときには注意した方が良いポイントがあります。契約と業務内容について以下の観点から検討した上で依頼するようにしましょう。
フリーランスと企業間の契約種類
フリーランスと企業の契約には業務委託契約、請負契約、委任契約・準委任契約があります。依頼内容に応じて請負契約または準委任契約を選ぶのが一般的です。請負契約は成果物の納品の対価として報酬を支払う契約です。事務では決算書の作成、社内説明資料の作成、アンケート結果の入力などを依頼するときに使用します。成果物の検収をしてから報酬を支払う流れになります。
一方、準委任契約は業務の遂行依頼に対して報酬を支払う契約です。業務行為への対価として報酬を支払うので成果によって金額が変わることはありません。通常は月額での支払いをする契約を締結します。会計書類の整理やシステムへの入力、社内説明資料の作成や電話対応などを常駐で依頼するときに利用する契約方法です。
有資格者にしかできない業務もある
事務の仕事をフリーランスに代行してもらう際には、業務内容によっては資格が必要になる点に注意が必要です。労務や社会保険に関しては社労士、税務や税関連の書類作成については税理士、法務については弁護士などのように士業の資格がある人しか代行を認められていない場合があります。無資格の人に確定申告を依頼したり、就業規則の作成を外注したりすることはできません。税務、労働保険、社会保険などの専門性の高い業務は有資格者に外注しましょう。
フリーランスに事務を外注する方法
フリーランスに事務の仕事を外注する方法としてよく用いられているのは以下の4つです。それぞれの特徴を紹介するので、良し悪しを見極めて目的に合った方法を選びましょう。
クラウドソーシングの利用
クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングを利用すれば、簡単にフリーランスに業務を発注できます。業務単価の水準が低くて契約もオンラインで済ませられるのでコストを抑えられるのがメリットです。しかし、システム手数料がかかり、契約によって料金体系も変わる点に注意が必要です。良い人材を見つけるのに苦労することもあるので気を付けましょう。
WebやSNSでのリサーチ
事務フリーランスとして活躍している人はWebサイトやSNSで仕事の募集をしています。担当してもらいたい業務の内容に関連するキーワードで検索すれば直接依頼できるフリーランスを見つけられます。フリーランスの経験や実績なども明示されていることが多いので、リサーチをすれば適材を抜擢できるでしょう。
知人の紹介
知人から紹介を受けてフリーランスに依頼することもできます。事務業務を担当できる人材がたまたま見つかったらスムーズに契約して業務を始めてもらえる可能性があります。ただし、知人からの紹介なので適材ではなかったときに断りにくいのが問題になりがちです。
事務代行業者に依頼
事務代行業者に依頼する方法は人材を探す手間がかからず、業務の依頼方法の検討も必要がないので簡便です。代行業者に依頼すると適材の紹介を受けられるだけでなく、条件交渉や契約手続きなども一元化して円滑に進められます。代行手数料の負担はありますが、費用対効果の高い方法です。
フリーランスに事務を外注する際のよくある不明点疑問
事務の仕事を初めてフリーランスに外注するときには不明点も多いことでしょう。よくある2つの疑問を解決する方法を紹介しますので、依頼する前に確認しておきましょう。
費用対効果に不安がある
フリーランスに事務の仕事を依頼するのと、新しい人材を直接雇用するのとでは費用対効果が高いのはどちらかという疑問はよくあります。費用対効果は実際に計算してみないとわかりません。自社で必要としている業務の洗い出しをして内製化した場合のコストとフリーランスに外注したときのコストを比較しましょう。費用対効果を業務ごとに計算するとフリーランスに依頼するメリットが大きい業務を厳選できます。
求める人材の適切な探し方がわからない
フリーランスに外注するときには依頼する業務に適切な人材を探し出すことが大切です。しかし、求める人材の適切な探し方がわからずに断念することもよくあります。適材探しには専門業者に相談するのが効率的です。事務業務に強い斡旋業者に相談すればミスマッチのリスクもなくなります。まるごとバックオフィスなら優秀な人材のチームを編成することも可能です。事務代行だけでなくフリーランス探しにも対応しているので活用してみましょう。
まとめ
事務の効率化を通して自社の人材にコア業務を担ってもらえる環境を整えるのは企業にとって重要課題です。フリーランスに事務代行を外注すれば、ノウハウに基づく効率的なやり方で業務を遂行してもらえます。優秀な人材を探し当てるのは大変ですが、事務代行業者に相談すれば適材の紹介を受けることが可能です。プロの業者に相談してスキルのあるフリーランスを獲得し、事務の業務効率を上げていきましょう。
記事の監修者
【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】
株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊
中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。