経理業務を外注することで業務効率改善?外注のメリットや外注依頼時に気をつけるべきポイントとは?

多くの企業が毎日の経理業務に膨大な時間と労力を費やしています。あまりにも多すぎる作業量を解消するには、経理の外注もひとつの方法です。一方で、「経理を外注する」ということの意味や目的を深く理解できていない人もいるのではないでしょうか。この記事では、経理を外注するメリットや注意点などを解説していきます。

経理業務の外注先を探す前に自社内で整理・確認すべきこと

経理業務の外注先を探す前に自社内で整理・確認すべきこと

実際に経理業務の外注先を探す前に、自社の課題をしっかり把握する必要があります。この段落では、外注先選びに必要な自社内で整理するべき経理関連のポイントについて説明していきます。

社内の経理業務の範囲

最初に、月間や年間で社内で行っている経理業務を整理しましょう。例えば、給与計算や税金支払いの業務などはいずれの企業にも欠かせない部分です。請求書や給与明細などの帳票作成、借方や貸方の仕訳業務なども頻繁に発生します。賞与や各種手当の計算も、経理担当者が行う業務です。年度末などには決算に関連する業務も行う必要があります。これらの業務をリストアップし、「何をどれくらい外注するべきなのか」業務範囲と量をはっきりとさせていきましょう。

現状の社内の課題の洗い出し

外注によって改善させたい社内の課題も洗い出したいポイントです。人件費や業務の正確性に悩み、外注を決断する企業が多いです。経理業務が増えればそれだけ人件費もかかりますし、人為的なミスも増えていくからです。他にも、法的変更が加わった際に行う対応への負荷が課題となるケースもあります。経理に関する法律は頻繁に改正されますので、常にチェックしておかなくてはなりません。ただ、日常業務を完璧にこなしつつ、新しい法律にまで対応するのは大変な労力です。そこで外注サービスを活用して、自社の負担を減らそうとする企業が多くなっています。

経理業務を改善するための主な手法4選

増えていく経理業務を楽にする手段は主に5つです。ツールやアウトソーシングの力を借りて、経理を効率化していきましょう。ここでは、5つの改善策をご紹介していきます。

ペーパーレス化

資料や帳票を紙にプリントアウトせず、ドキュメントで取り扱う手法が「ペーパーレス化」です。給与明細や請求書などをPDFで保存し、現場で使っている企業は少なくありません。印刷にかかる手間や時間だけでなく、コストも削減できるのはペーパーレス化のメリットです。

システム化

経理のコア業務に関して、システム導入に踏み切っている企業もあります。特に給与計算や勤怠管理は毎日処理が必要であり、作業としても複雑です。従業員が多くなるほど、ヒューマンエラーのリスクは高まるでしょう。システム化は現場の負担軽減、正確性の向上の両方で効果があります。

クラウド会計ソフト導入

「freee」「マネーフォワード」などのクラウド会計ソフトの導入も改善策のひとつです。これらのソフトは経理業務を簡略化するだけでなく、データのバックアップも自動的に行われるため、データの消失を心配する必要もありません。初期費用0円、月額3,000円前後の安価なプランも用意されています。インターネット環境さえあれば、すぐに導入できるのも魅力でしょう。

外注・アウトソーシングする

経理業務のプロである経理代行業者に外注・アウトソーシングするのもおすすめです。外注先としては、経理業務を丸ごと代行してくれる企業や、税理士事務所、公認会計士事務所などが選択肢となります。これらの企業や事務所は税制に詳しく、日常業務に関するアドバイスをもらえる点でもメリットが多いといえます。

経理業務を外注・アウトソーシングする主な3つのメリット

経理業務を外注・アウトソーシングする主な3つのメリット

普段の経理業務に負担を感じているのなら、外注・アウトソーシングを検討してみましょう。この章では、外注・アウトソーシングのメリットを3つに分けて解説します。

人件費の削減

外注・アウトソーシングは自社で経理担当者を新たに採用するより、費用を抑えられます。さらに、退職や引継ぎにかかるコストも削減できるでしょう。自社の人材に業務が属人化してしまうと、引継ぎの難易度は高くなりかねません。こうした費用面の問題は、外注・アウトソーシングで回避できまです。

新たな法制度への対応

経理に関する法制度が改正されたり、新しく施行されるたび、外注先がフォローをしてくれます。例えば、電子帳簿保存法やインボイス制度などといった法律の施行は経理業務全般に大きな影響を与えています。社員に調査を行い、結果を業務に反映させなくてはならないような場合、経理担当者の業務は膨大になりかねません。しかし、外注先に経理業務を託していれば、自社の従業員は十分なサポートを得ながら本業に専念できるでしょう。

不正の防止

不正防止のために経理業務の外注・アウトソーシングをしている現場もあります。経理担当者は金銭や機密情報と密接にかかわる立場です。思わず不正に手を染めてしまう可能性も完全にゼロではないでしょう。外注化することで、金銭や機密情報の取扱いに長けた第三者に管理を委託できます。不正のリスクを抑え、健全な経営体制を維持するためにも外注サービスは便利です。

経理業務を外注・アウトソーシングする主な3つのデメリット

外注・アウトソーシングにはデメリットが発生する場合もあります。あらかじめ考えられる問題を調べ、対処できるようにしましょう。ここでは、経理の外注で起こりえるデメリットを挙げていきます。

社員育成ができない

経理専門の人材を採用せず、社員教育をしないことで自社に専門スキルが蓄積されないのはデメリットのひとつです。万が一、外注ができない状況になったとき、経理業務を自社でまわせなくなってしまいます。そのため、外注をしていても社内教育は継続していく方が得策です。

処理に時間差が発生する場合がある

経理を外注していると、どうしてもやりとりが間接的になってしまいます。外注業者は並行して複数の案件を処理しているので即時対応できず、タイムラグが生まれることもあるでしょう。経理業務が遅れて最終的に自社の負担にならないよう、外注先とのワークフローをしっかり決めておく必要があります。

情報漏えいのリスクがある

原則として、外注業者はセキュリティには万全の注意を払って作業しています。それでも、経理データを外部に渡すことでの情報漏洩の可能性はゼロと言えません。依頼の際はNDAを結び、相手の情報管理への姿勢を確かめておくことが大事です。信頼できる実績のある外注先を選ぶようにしましょう。さらに、外注先のチェック体制も把握し、情報が洩れるルートは除外しておきましょう。

経理代行と記帳代行の違いとは

経理代行と記帳代行の違いとは

外注・アウトソーシングで混同されやすいサービスに「経理代行」と「記帳代行」があります。いずれも経理関係の業務を外注する際、利用するサービスなのは変わりません。しかし細かい内容が異なりますので注意しましょう。ここでは、2つの違いを解説します。

まず、経理代行とは「経理業務全般をクライアントに代わって行う仕事」のことです。明確な条件や範囲が決まっているわけではなく、クライアントによって依頼内容は変わってきます。例えば、給与計算だけ依頼する企業もあれば、外注先が給与明細まで発行するパターンもありえます。そのほか、請求書発行や支払い、税金の計算など、とにかく経理関係の業務ならすべて経理代行に当てはまります。

一方、記帳代行は経理業務の中でも「入力作業」に特化したサービスです。記帳代行の業者はクライアントからある範囲内での売上データや従業員の勤怠データなどを渡されます。これらの数字をシステムに入力するまでが記帳代行です。計算はあくまでもシステムが行いますし、帳票類の発行は業務に含まれていません。つまり、経理代行は記帳代行よりも専門性の高い業務だと言えるでしょう。もし経理業務を外注するのであれば、記帳までの作業対応で良いのか、それとも他の作業も任せたいのかを明確にしなければなりません。経理代行か記帳代行で、依頼できる業者は絞り込まれてしまうためです。

経理業務と税理士との関係性、必要性とは

税理士と契約を結び、経理業務をサポートしてもらっている企業もあります。そうした企業は税理士に経理の大部分を相談していることも珍しくありません。ここからは、経理業務と税理士の関係性について解説します。

税理士には必ず相談しなければならないのか

結論から言えば、税理士との契約は企業にとって必須ではありません。実際、税理士と契約せずに、自社で経理業務を行っている企業もあります。それでも、多くの企業から税理士が必要とされるのは、経理業務のプロフェッショナルとして広範囲の仕事を担えるからです。

決算や確定申告、税務申告など複雑な作業も税理士は正確にこなせます。企業が経理でトラブルを起こさないよう、税理士は的確にアドバイスをすることも可能です。逆に言えば、自社でこれらの業務を問題なく処理できるなら、税理士に依頼する必要はないということです。

税理士と健全な関係を結ぶためには

企業が税理士に依存しすぎず、健全な関係を結ぶには「依頼する範囲」と「相談したいポイント」を明確に伝えることが重要です。、これらが不明瞭な場合、経理業務や経営のすべてを税理士なしではこなせなくなってしまうからです。例えば、「節税対策を知りたい」「事業戦略についてアドバイスをもらいたい」などの方針は税理士との契約後ではなく、契約前に定めておくと相互認識がすり合わせられるため良いです。各方針の中での重要事項を絞り込み、税理士に相談すれば費用に見合ったアドバイスをもらいやすくなります。

経理業務を外注・アウトソーシングする際の注意点

経理業務を外注・アウトソーシングする際の注意点

依頼してからトラブルにならないよう、経理業務の外注・アウトソーシングをする際にはチェックしたいポイントを押さえておきましょう。ここでは、経理業務の外注・アウトソーシングで注意したい点を挙げていきます。

セキュリティ体制

外注業者がどのようなセキュリティ体制を築いているのかは、第一に確認したい部分です。経理業務の外注では、社内の重要なデータを渡すことになりますので、これらのデータをやりとりする方法、及び情報漏洩を防ぐ管理体制はしっかり説明してもらいましょう。さらに、依頼する業者の情報管理ポリシーも確かめたいところです。安全かつ共感できる意識を持って情報管理している業者なら、安心して業務を任せやすくなります。

業務範囲、納期

自社と業者で業務範囲がどのように切り分けられるのか、契約前にチェックしましょう。契約書によって業務範囲が明確化されていると、認識齟齬が起きづらく、運用がスムーズに進みます。

契約書では、依頼サイドの負担も読み込んでおきたいポイントです。外注先に有利な業務内容で、自社の負担が大きくなるような業者は候補から外した方が良いでしょう。そのほか、作業の期日も契約書に記載しておきます。経理は納期が絶対の業務ですので、期日を守れない外注先は避けるようにしましょう。

過去の実績

外注先の実績が分かれば、信頼できる業者かどうかを見極められます。単なる受注件数だけでなく、得意としている業界、業務内容も調べましょう。可能なら過去のミス事例まで確認できると、相手を信用できます。クライアントの解約率や継続率も参考にできるデータです。契約後も手厚くフォローしてくれる外注業者を選びましょう。

経理業務を外注する際の費用の相場感は?

業務効率化を目指すには、外注によるコストも細かく把握しておいた方が良いでしょう。この段落では、経理業務を外注・アウトソーシングした場合の相場について解説します。

記帳業務と給与計算の場合

一般的に、記帳業務のアウトソーシングは依頼件数ごとに算出される仕組みです。相場は1件あたり50~100円ほどです。ただし、ある程度の量をまとめて依頼する場合は、月額料金で固定した方がお得になる場合も少なくありません。月額ならば、「100仕訳までなら5,000~1万円」「200仕訳までなら1万~2万円」などと料金が定められています。

決められた件数が超過した場合は別途追加料金が発生する場合もあります。給与計算の外注費用は従業員1人につき、1,000~1,500円ほどが相場です。例えば、従業員50人の企業が外注した場合、費用は5万~7万5,000円ほどになるでしょう。

法人税の申告や決算書の作成の場合

法人税の申告や決算書作成を外注する際の費用は、事業規模によって変動します。なぜなら、税務申告や決算対応に関連する業務内容は事業が大きくなるほど複雑になっていくからです。一般的な相場は、年商1000万円未満の企業が依頼をする場合、費用は10万~15万円ほどです。年商1000万~5000万円の企業になれば、外注費用は15万~25万円ほどになります。年商5000万円~1億円の企業が外注する場合には、20万~30万円ほどがかかってくるでしょう。

経理の外注で業務効率アップ!安心して任せられる業者を見つけましょう

経理の外注で業務効率アップ!安心して任せられる業者を見つけましょう

毎月の経理業務や決算に悩まされているなら、外注業者に任せるのがおすすめです。外注サービスの多くは経理のプロフェッショナルであり、正確かつ安全にデータを処理していきます。負担のかかる業務が減る分、従業員はより重要な仕事に集中できるようになるでしょう。費用や得意分野などを調べた上で、自社にぴったりな外注先を見つけましょう。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。