中小企業が会計コンサルティングを依頼するシチュエーションとは?依頼できることや選び方、報酬や契約内容を解説

会計業務や財務関連に課題を抱えているときに、検討するのが会計を専門としたコンサルティングの依頼です。会計コンサルティングの仕事は、企業が抱える課題、企業規模によって依頼内容が変わり、それにより選ぶべき会計コンサルタントも異なってきます。この記事では、中小企業向けの会計コンサルティングの概要や、会計コンサルタントと税理士の違い、会計コンサルタントへ依頼できること、会計コンサルタント選びの前に知っておくべきポイントなど、詳しく解説します。会計や財務の課題解決に、ぜひ役立ててください。

中小企業向け会計コンサルティングとは?

会計コンサルタントは、企業や個人事業主、フリーランスなどから会計や財務に関する相談を受け、課題の発見や解決策の提案をサービスとして提供する職種です。

業務内容やコンサルを行う会社の規模、会計コンサルタントが活躍する場所によって、サービスの提供範囲が異なります。

  • 総合系コンサルティングファーム…会計、総務、人事などあらゆるコンサルティングを行う組織
  • FAS系コンサルティングファーム…会計コンサルティングに特化した組織
  • その他のコンサルティングファーム…戦略系、IT系などのコンサルティングファーム
  • 独立開業系…会計コンサルタントが法人または個人事業主として会計コンサルティングを提供

一般的に、コンサルティングファームは大企業向け、独立開業系は中小企業や個人向けのコンサルティングを提供する傾向にあります。コンサルティングファームでも中小企業のコンサルティングに強いところもあるため、自社の規模に応じた会計コンサルティングを受けられる会計コンサルタントへ依頼するのが重要です。

会計コンサルタントと税理士の違い

会計コンサルタントと似た職種に、士業である税理士があります。税理士が得意としている分野は「税務」です。会計コンサルタントが企業の会計や財務全般に関する課題の発見や解決方法の提示といった会計コンサルティングを提供する一方で、税理士が担当するのはあくまで税務に関することになります。

税理士のおもな仕事は、確定申告などの税務代行、税務署類の作成、税金に関する相談を受ける税務相談の3つです。これらの業務以外にも、記帳の代行や会計の参与、さらに税務や資金調達に関するコンサルティングを行うこともあります。ただし、コンサルティングを専門としているのではなく、あくまで独立業務を柱とした税務に関する業務を行っていることが、税理士と会計コンサルタントとの違いです。

会計コンサルタントに依頼できる内容

会計コンサルタントに依頼できることを具体的に解説します。

会計システム・クラウドツールの導入支援

企業の会計業務効率化のために、会計システムやクラウドツールの導入を検討するときも、会計コンサルタントから支援を受けられる場合もあります。企業が現状抱える課題に対して適切なシステムやツールの導入、初期設定、導入後のサポートなどを行います。システムやツールを新しく導入したいときはもちろん、システムやツールの追加や乗り換えへの支援も時として可能です。

資金繰り・キャッシュフロー改善アドバイス

財務状況の悪化により資金が足りない、資金不足を防ぎたい、手形の決済資金が工面できないなど、資金繰りやキャッシュフローに課題を抱えているときの改善策の提案なども可能です。資金繰りを悪化させている要因の特定と対策、資金繰り表の作成による資金状況の把握、支払いを止める優先順位付けなどを、会計コンサルタントがサポートします。

会計全般や財務のアドバイス

会計全般や財務に関するアドバイスの提供は、おもな会計コンサルタントの業務です。会計や財務の業務改善や、スタートアップ企業の会計や財務体制の構築など、いろいろな相談ができます。

経理・会計業務の代行

毎月の記帳代行など、税理士が行う経理や会計業務の代行を依頼できる会計コンサルタントもいます。経理や会計業務の代行は税理士の独立業務ではないため、会計コンサルタントへの依頼も可能です。

事業承継・M&A支援

企業の状況に応じた事業承継方法の選択、後継者の育成や選定、事業承継にともなう相続税制など、事業承継やM&Aへの支援も、会計コンサルタントへ依頼できます。

中小企業が会計コンサルの導入前にやっておくべきこと

会計コンサルタントを導入する前に、企業側があらかじめ準備することでよりスムーズなサポートが受けられる、「やっておくべきこと」を紹介します。

社内で課題の洗い出し

あらかじめ社内で抱えている課題を把握しておくことで、依頼すべき会計コンサルタント選びがスムーズになります。逆に課題を把握しないまま会計コンサルタントに依頼してしまうと、認識の違う結果となることもあります。社内であらかじめ議論を行い、以下のような課題を洗い出しておきましょう。

  • 会計に関する法規制への対応
  • 会計業務の効率化やプロセスの改善
  • 最適な投資や戦略投資について
  • 費用の削減について
  • 資金調達について
  • 事業承継やM&Aについて など

根本課題を整理する余裕がない、といった場合は課題と原因の発見から掘り下げ、具体的な解決方法の提示まで依頼できる会計コンサルタントも存在します。

複数のコンサルタントやコンサル会社を候補に挙げておく

会計コンサルタントは、コンサルタントやアナリストが所属する組織である「コンサルティングファーム」に所属している場合と、独立開業している場合があります。さらに、会計コンサルタントやファームによって、得意としている分野や業務内容は異なります。自社が抱える課題に合った解決力や提案力を持つ会計コンサルタントを選ぶためにも、複数のコンサルタントやコンサルタントファームを選択肢として挙げておきましょう。

会計コンサルタントを探す方法には、以下のものがあります。

  • 知り合いで会計コンサルタントを利用した人に紹介してもらう
  • 企業の得意先となっている会計コンサルタントを紹介してもらう
  • 会社で依頼している会計士や税理士、銀行などに相談する
  • Web上で検索して自力で見つける

会計コンサルタントの選び方

課題解決や自社と相性の良い会計コンサルタントを選ぶためのポイントを解説します。

実績や業界への理解

会計や財務の効率化、事業承継、資金繰りなど、依頼を検討している分野での実績が豊富にある、会計コンサルタントを選びましょう。実績が多ければ多いほどソリューションの持ち札が多く、課題に沿ったコンサルティングサービスを提供してくれる可能性が高まります。

自社の業界に関して理解を持っている会計コンサルタントを選ぶのも重要です。ただし、実績は自社の業界以外の経験が多い会計コンサルタントを選びましょう。自社と同業界での実績が多い会計コンサルタントの場合、多角的な提案ができない可能性が高いためです。他業界での実績が豊富な会計コンサルタントであれば、他業界の知見もふまえたうえで、自社では気付かない課題の発見や解決の提案につなげられるでしょう。

コンサルタントとの相性

中小企業診断士や経営士などの資格を保持している、コミュニケーション能力が高いなど、魅力的な会計コンサルタントは多く存在します。ただし、自社と長く付き合える会計コンサルタントを選ぶために重要となるのは、相性です。どんなに優秀な会計コンサルタントでも、自社と相性が悪ければ相談をしても課題解決にはつながりません。得意分野やスキルだけではなく、人柄や信頼性も考慮し、自社と相性の良い会計コンサルタントを見つけましょう。

提案内容

会計コンサルタントによって、提案内容が異なります。依頼前に以下のポイントを先に提示しておくと認識がすり合わせできるため、自社の課題解決のための提案が受けられる質の高い会計コンサルタントへの依頼につなげられます。

  • ゴール
  • 認識している課題
  • 契約期間
  • 予算
  • 専門分野 など

アフターフォローはあるか

会計コンサルタントへの依頼内容によりアフターフォローの有無が異なります。以下のようなアフターフォローがある方が安心して業務依頼ができる場合もあります。

  • 会計システムやクラウドツールの導入支援…導入後の運用支援をアフターフォローとして受けられる
  • 経理業務コストの削減…コスト削減案の運用開始後から成果の計測、継続のためのアフターフォローを受けられる など

会計コンサルティング契約の種類や料金体系

会計コンサルティング契約は「単発・プロジェクト型契約」「顧問契約(アドバイザリー契約)」「時間契約」「成果報酬」の4つに分かれます。それぞれの契約の特徴や料金の目安を解説します。

単発・プロジェクト型契約

単発・プロジェクト型契約とは、コンサルティング契約のなかでもっとも採用されている契約体系です。単発は会計コンサルティングに関する依頼を単発(スポット)で契約する方法です。例えば「会計システムの導入」など、単発で解決できる案件が依頼内容となります。一方でプロジェクト型は一定の期間を決めて、数ヶ月単位のプロジェクトとして経営コンサルティングを依頼する方法です。

単発・プロジェクト型契約の報酬体系は、「会計コンサルタントの関与時間」×「単価」のシンプルな式で価格が決まります。単価は会計コンサルタントの役職によって異なり、コンサル会社やファームによって発生する単価のレートは定められていることがほとんどです。そのため、依頼金額の交渉を行う場合には、単価ではなく会計コンサルタントが関与する時間を少なくする、つまり依頼内容をどこまで少なくできるかが金額を交渉する材料となります。

顧問契約(アドバイザリー契約)

毎月一定の回数や決まった時間に会計コンサルティングを受ける方式です。定額契約とも呼ばれています。長期的な課題解決のためのアドバイスを行うほか、企業の相談役として会計コンサルタントがかかわるケースもあります。課題調査や分析などはサービスの対象外となることが多いため、実行に伴う社内検討以降のプロセスは自社側で進める必要が出てきます。

顧問契約の費用は毎月定額ですが、コンサルタントの時間単価によって変動するため5万円~数十万円後半と幅があります。相談形式は月1~2回での対面形式のほか、電話やメールで質問や相談を受け付けるスタイルもあります。

時間契約

会計コンサルタントが稼働した時間に応じて報酬が支払われるのが時間契約です。経理代行など時間単位での依頼や、1~2時間程度単発でのアドバイスや相談が受けられる「スポットコンサル」などの契約体系として採用されることが多くなっています。

報酬は一般的に1時間あたりの単価で請求されます。時間単価はコンサルタントの実力、経験、スキルなどで変動するのが特徴です。

成果報酬

会計コンサルティングの成果の達成度合いによって報酬が支払われる契約が、成果報酬です。「コスト削減」などの依頼で採用されています。成果報酬は「基本報酬」+「成果報酬」で支払われるのが一般的です。たとえば基本報酬を「通常のプロジェクト型契約の報酬の5割」と設定し、コスト削減を実現できた場合に「削減できた金額の2~5割」が成果報酬として支払われます。

会計コンサルタントへ費用をかけて依頼をしても、実際に成果が出るか分からない課題の場合、成功報酬型にすることで不安を払拭できるのがメリットです。ただし、依頼する内容によっては成果の測定方法や方向性が定まらず、契約時点でもめてしまうリスクも考えられます。成果報酬で会計コンサルタントへの依頼を検討する場合、通常よりも早めに社内で契約に関しての取り決めを行うことが重要です。

まとめ:会計コンサルの活用は、経営者次第

企業の抱える課題や解決策、ゴールは経営コンサルタントだけではなく、経営者も一緒に考えていくことが重要です。会計コンサルタント自身が課題を解決するわけではありません。コンサルタントから受けた提案を実際の業務や経営に反映できるかどうかは経営者の手腕にもかかっています。会計コンサルタントがすべてを解決するのではなく「結果が出せるかは自分の責任」という意識を持ち、経営者自身も会計や財務を学び、経営力を高めていく努力が必要です。

まるごとバックオフィスは、会計コンサルティングにも対応

まるごとバックオフィスでは、経理・会計業務の代行だけでなく、クラウド会計の導入支援、業務効率化のための業務整理や業務フロー図作成などのコンサルティングにも対応しております。福岡県を中心に、対面型での支援を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。