人事や労務の採用時に重要視すべき資格やキャリアとは?内製か外注どちらがメリットが多い?

人事や労務の採用時に重要視すべき資格やキャリアとは?内製か外注どちらがメリットが多い?

人事と労務は会社にとって必ず設けておきたい大切なセクションです。とはいえ、人事と労務には一定の専門性やキャリアが必要なため、自社で育成する内製かアウトソーシング(外注)かで悩む経営者は少なくありません。そこで、本記事では内製とアウトソーシング双方のメリット・デメリットとともに、資格とキャリアについても解説します。なお、事務業務と士業紹介をセットで相談に乗ってもらいたい場合は外注がおすすめですよ。

人事や労務の仕事内容とは

人事や労務の仕事内容とは

人事は、人材に関するすべての業務を担当します。主な仕事は、人材の採用、配置、教育、評価制度の策定などです。一方の労務は、労働に関する業務全般を担当しています。主な仕事には、勤怠管理と給与の計算、社会保険の手続き、健康診断への対応などがあります。

人事の主な仕事とは

人事が行う主な仕事内容は大きく分けて4つ、「採用」「配置」「教育」「評価制度の策定」です。それぞれの領域で行う仕事の内容と一般的な業務範囲についてここでご説明します。

採用

人材の募集、面接、選考や、入社・休職・退職の事務手続きなどを行います。ただし、面接や選考に関しては人事単独で行うのではなく、経営者や他の部署の管理職とも連携するケースもあります。

配置

適材適所に人材を配置するための企画を行います。新規採用も配置業務の1つです。

教育

人材育成や社員の能力開発が主な仕事です。新人教育だけでなく、中堅社員への研修に関する企画も行うケースもあります。

評価制度の策定

主な仕事は、社員の業績を客観的に評価するための制度の企画や作成です。経営者の意見を重視しながら行う必要があります。

労務の主な仕事とは

  • 勤怠管理と給与の計算
  • 社会保険の手続き
  • 健康診断への対応

勤怠管理と給与の計算

社員の出勤や欠勤などの管理と、給与や賞与などに関する計算を行います。

社会保険の手続き

健康保険、厚生年金、雇用保険などに関する業務全般を担当します。雇用や退職、社員の扶養家族が増減した際に必要な各種社会保険の手続きなどを行うのが主な仕事です。

健康診断への対応

会社では定期的に健康診断を行いますが、病院などへの連絡業務や社員への告知は労務の大切な仕事の1つです。社員が滞りなく受診するためのサポートが、その主な役割とされています。

人事や労務に必要な資格について

人事や労務に特別な資格は必要ありません。もちろん、持っていることで仕事に生かせる資格もありますが、闇雲に取得しても意味がありません。人事や労務は一般的なイメージよりも専門性が必要な職種のため、資格を取得したりさせたりする場合は次の2点に注意する必要があります。

  • 自分がどういう働き方を望んでいるのかといった、個人としてのキャリアを考えて取得する。
  • 会社として本当に必要な資格を推奨したうえで、サポート体制について相談させる。

人事や労務には衛生管理者やメンタルヘルスマネジメントといった資格もありますが、自分のキャリアに不要であれば宝の持ち腐れです。そのため、資格を取得するのなら今後のキャリアを考えることが大切になります。また、会社は自社に必要な資格を推奨して、サポート体制について相談できる体制を整えておくことが重要です。

人事や労務にはキャリアと適正も大事

人事や労務にはキャリアと適正も大事

人事や労務には資格も必要ですが、一定のキャリアや適性も大事な要素です。たとえば、人事として採用された場合、まずは新卒採用や労務からスタートすることが少なくありません。新卒採用や労務の仕事をこなしながら自社業務への理解が深まった時点で、人事の仕事の幅を広げていくのが一般的なキャリアの積み方です。なお、人事や労務に向いているのは次のような人です。

  • 専門性が高い
  • コミュニケーション能力が高い
  • 倫理性が高い

人事や労務には意外と高い専門性が要求されます。人事には人材の見極めや教育、労務職には各種手続きに関する高い専門性が必要です。また、人や個人情報と接することが多いことから、コミュニケーション能力と機密情報が守れる倫理性の高さも必要な能力の1つです。

人事や労務に関する人材を採用する際には、仕事内容を紹介したうえでキャリアを知ることが大切

人事や労務に関する人材を採用する際には仕事内容を紹介したうえで、その経験値を知ることが大切です。人事なら人材の採用、配置、教育、評価制度の策定が挙げられます。労務であれば、勤怠、給与計算、社会保険への対応といった業務経験があればベストです。人材を見極める際には経歴や資格の種類なども参考になりますし、面接時の質問によっても判断できます。もちろん、専門性・コミュニケーション能力・倫理性といった、人事や労務に関する適正の有無を見極めることも必要になります。また、同じ人事や労務でも他社と自社では仕事内容が異なる場合があるため、その点もしっかり説明したうえで、仕事に対する柔軟性や対応力などの適性も考慮して採用活動を行うと良いでしょう。

人事や労務に従事するなら保持しておきたい資格3選

人事や労務に従事するなら保持しておきたい資格3選

人事や労務に関する人材を採用する場合、自社が求める資格の保持者であれば良いのですが、必ずしもそのような人材を確保できるとは限りません。では、どのような資格保持者が理想的なのでしょうか。人事や労務に従事者に保持してもらいたい3つの資格を紹介します。

人事や労務に適した資格3選

人事や労務を採用する際に、スキルとして保持しているか確認したい資格が以下の3つです。

  • キャリアコンサルタント
  • 人事総務検定
  • 社会保険労務士

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルティングに関する資格で、2016年から国家資格に格上げされています。当コンサルタントの主な業務は、求職者(無職とは限らない)に対する職業選択や能力開発に関するアドバイスです。そのうえで、それぞれに適したキャリア形成のサポートを行います。そのため、社員教育に強みを発揮する資格の1つとされています。なお、当資格を受験するためには、厚生労働大臣が認定する講習を終了するか、「労働者の職業の選択」か「職業生活設計または職業能力開発および向上の相談業務」に3年以上従事していた経験などが必要です。

人事総務検定

人事や総務に関する知識を体系的に身に付けられる資格です。一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が主催しています。当検定を学ぶことで、人事、労務管理、就業規則などに関する知識が身に付きます。人事や労務に関する業務内容は会社ごとに異なる場合があるため、臨機応変に対応するためにも体系的に学んでおくことが大切です。人事総務検定は1級〜3級に分類されていて、3級は誰でも受験できます。2級を受験するためには3級に合格する必要があり、1級を受験するためには2級に合格する必要があります。なお、2級と1級の受験には一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会への登録も必要です。

社会保険労務士

社会保険労務士(社労士)は国家資格の1つで、資格保持者は労働や社会保険のエキスパートとして活動できます。当資格で身に付けられるのは、労働保険や社会保険、年金、就業規則などに関する知識です。そのため、労務として採用されるためには必須の資格であるともいえます。受験資格は、学歴、実務経験、国家資格の3つに分類されています。学歴の場合は、大学、短大、専門学校などの卒業者と大学における規定単位数の取得者です。実務経験は、会社やその他の法人で労務担当役員として3年以上従事していた人や、国か地方公共団体の公務員などとなっています。国家資格は、社会保険労務士以外で厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した人や行政書士などが該当します。

このように、保持しておきたい資格のレベルは決して低くありません。そのため、これら3つの資格の保持者を内製で確保するのは容易でないことが理解できます。特に、人件費が潤沢ではない中小企業が当該の人材を内製で確保するのは困難であるため、アウトソーシングを検討してみるのも1つの方策かもしれませんね。

人事・労務に関する人材をすぐに採用できない場合の対処法

人事や労務に関する人材を内製によって確保することは、多くの会社にとっての理想かもしれません。元来、日本の会社では社員を内製によって確保してきました。自社で採用して育成し、キャリアを積ませることで成長させてきたのです。また、育成の一環として資格取得のサポートも行っています。ただし、こういった方策には一定の時間やコストが必要で、資格を取得した直後に退社してしまうという事例も少なくありません。そのため、効率性の向上が求められる現在のビジネスシーンにおいて、このような方策がベストであるとは思えません。そこで推奨したいのがアウトソーシングの活用です。限られた予算と時間の中で一定のスキルと資格を持つ人材を確保するためには、アウトソーシングがベターな方策であると考えているからです。

人事と労務のエキスパートである社労士にどこまでの業務を依頼するべきか

人事と労務のエキスパートである社労士にどこまでの業務を依頼するべきか

社労士の業務範囲は多岐に渡ります。労働社会保険の手続き、労務管理の相談、年金に関する相談、紛争解決手続きの代理などが主な業務です。労働社会保険の手続きや紛争解決手続の代理は専門性が高く、社労士が適任とされています。ただ、労務管理の相談や年金に関する相談は必ずしも社労士でなくても大丈夫です。むしろ、労務管理の相談であれば、社労士よりもキャリアコンサルタントや人事総務検定の合格者のほうが適しているともいえます。また、年金に関する相談は、日本年金機構や街角の年金相談センターでも可能です。このようなことから、一般的な会社が社労士をアウトソーシングする場合は、労働社会保険の手続きだけを依頼するのが得策かもしれませんね。

結局のところ、人事や労務は内製とアウトソーシングのどちらが良いの?

ここまで人事や労務についての概要を見てきましたが、結局のところ内製とアウトソーシングのどちらを選択すべきなのでしょうか。もちろん、自社の環境や財政状況などを考えて選択すべきですが、双方のメリット・デメリットを知ったうえで検討してみるのも良いかもしれませんね。

内製のメリット

  • 社内にスキルや知識を蓄積できる
  • 業務の効率化が期待できる
  • 情報の漏洩を防止できる

社内にスキルや知識を蓄積できる

内製では先輩が後輩を育成することも可能です。このようにスキルや知識が受け継がれることで、結果的に人事や労務に関するスキルや知識が自社に蓄積されることになります。

業務の効率化が期待できる

内製は社員の育成に一定の時間が必要ですが、育て上げてしまえば社内に通じている分だけ効率的な業務が期待できます。

情報の漏洩を防止できる

人事や労務は社員や応募者の個人情報を扱うセクションです。内製は自社の社員がすべての業務を担当するため、大切な情報が漏洩する可能性を小さくできます。

内製のデメリット

  • 育成に一定のコストが必要
  • 育成には一定の時間も必要

育成に一定のコストが必要

人事や労務に関する人材を内製で確保する場合、さまざまなコストが必要になります。給与や賞与はもちろん、社会保険料、福利厚生費、資格を取得するための経費、研修費なども必要です。このように、1人の人材を育て上げるために多くのコストを必要とする点が、内製の大きなデメリットであると考えます。

育成には一定の時間も必要

人事や労務に関するスキルや資格を持つ人材を内製で確保するには、それなりの時間も必要になります。特に、新人を採用して自社で育てる場合は、最短でも3年程度は必要になることを覚悟しておきましょう。

アウトソーシングのメリット

  • 人材の育成が必要ない
  • 人材育成のコストが発生しない

人材の育成が必要ない

人事や労務をアウトソーシングする最大のメリットは、なんといっても自社で人材を育成する必要がないことです。しかも、育成をせずに一定のスキルと資格を持つ人材を確保できるため、自社の育成体制に不安がある会社にとってはありがたい存在であるといえます。

人材育成のコストが発生しない

人材育成に必要なコストが発生しないのもアウトソーシングのメリットの1つです。内製のデメリットで示したように、人材育成には多くのコストが必要です。アウトソーシングで発生するのは月額利用料のみのため、全体的なコストを大きく削減できます。

アウトソーシングのデメリット

  • 業務内容の把握が困難になる可能性がある
  • 情報が漏洩するリスクがある

業務内容の把握が困難になる可能性がある

アウトソーシングでは、人事や労務に関する業務を外部の人間に任せきりにしてしまう恐れがあります。その結果、自社の社員が業務内容にアクセスしなくなって、情報を把握しているのは外部の人間だけという状況になることも考えられます。

情報が漏洩するリスクがある

人事や労務をアウトソーシングする場合、情報漏洩のリスクを考えておく必要があります。ただし、業者のセキュリティーや情報の取り扱いに関するレベルが高いと判断できるのであれば、この点に関しては心配しすぎる必要はありません。

人事や労務の人材育成に悩んでいるのならアウトソーシングも検討してみよう

人事や労務の人材育成に悩んでいるのならアウトソーシングも検討してみよう

人事や労務に関する人材は内製で確保するのが理想かもしれませんが、人材育成の効率化を考えればアウトソーシングも選択肢の1つとして有効です。アウトソーシングの主なメリットは、人材育成の必要がない点とコストが削減できる点の2つです。また、事務業務と士業紹介の2つをセットで相談に乗ってくれる業者もあるため、人事や労務の人材育成に悩んでいる場合には1度相談してみることをおすすめします。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。