中小企業が行うべき採用戦略とは?戦略の立て方や注意点を解説

中小企業が行うべき採用戦略とは?戦略の立て方や注意点を解説

企業および事業所が必要な人材を獲得するために立てられるのが「採用戦略」です。採用戦略を立てることで採用すべき人材像が具体化され、スムーズな採用活動を行えるメリットがある一方、自社の規模や採用する対象に合わせた戦略を立てることも求められます。この記事では、中小企業やスタートアップ企業、事業者が採用戦略を行なった方が良い理由や、そのメリット、具体的な戦略の立て方について解説します。

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採用戦略を立てる目的

採用戦略を立てる目的

採用戦略が注目される背景にあるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。企業を取り巻く採用活動が厳しい状況にあるからこそ、採用活動は企業全体での取り組みが求められています。企業全体の採用の指標として、採用戦略を立てる目的について解説します。

採用手法の変化へ対応するため

面接や説明会をはじめ、従来採用手法としては対面式であることが多い傾向にありましたが、近年コロナ禍の影響を受け、オンライン面接、リモート説明会など非対面非接触の採用手法も多くの企業で採用されています。今後もオンラインやリモートでの採用活動が一般的となる可能性が高いため、新しい採用手法へ対応するためにも採用戦略が必要となることでしょう。

応募者の集客や企業の認知のため

企業が人材を求めて、いざ募集を開始しても採用募集されていることが求職者に知られておらず、応募者が来ない場合があります。特に中小企業の場合は応募者を確保するために、自社の魅力や事業などを求職者にしっかりと伝えることが重要です。自社の存在を認知や魅力のアピールのための戦略も、採用戦略に含まれます。

応募者を安定的に集めることで応募者の母集団が形成でき、一次面接、最終面接、採用人数と段階的な採用活動が可能となります。質の良い応募者を選定できるようになるため、結果的に採用の成功にもつなげられるでしょう。

ミスマッチを防止するため

優秀だと思った人材が入社後求める能力やスキルを持っていなかった、または入社後採用者の持つイメージと企業のイメージが異なり、早期退社してしまったなどのミスマッチ(食い違い)が発生することがあります。ミスマッチが生じることで、採用活動にかけたコストが無駄になってしまうこともあるため、それらを防止することにも有効です。

競合に負けないため

優秀な人材は当然他の企業からも人気が高いです。自社よりも魅力のある会社から内定を受けたら、自社の内定を辞退される可能性もあります。競合に負けず優秀な人材を確保するためにも、採用戦略を立てる必要性が高まります。

採用戦略を立てることで得られるメリット

採用戦略を立てることで、採用活動はもちろん企業にとっても多くのメリットが得られます。採用戦略により得られるメリットを解説します。

組織力の強化

採用戦略を立てるにあたり、自社が求めている人材や、人材の採用によって解決する課題を考えることが必要です。組織全体で採用活動について考える機会を持つことで、社員の帰属意識や採用に関する関心が高まり組織力が強くなるメリットがあります。

採用業務の効率化

採用戦略を立てると、求めている人材のイメージが明確になり、獲得するための施策や方向性が分かります。施策に対しては応募者の人数、経歴、年齢、性別、書類選考通過率、実際の採用人数などのデータを分析して成果を見ます。そのため、施策による応募先や採用の成功率がわかり、その後の採用活動の効率化にもつながるでしょう。

採用活動の最適化によるコスト削減

採用戦略を立てることで、自社の状況やターゲット人材に合わせた最適な採用手法が選べ、効果も検証できます。採用活動にかかるコストや、失敗したときに手法を変えるコストなどを削減できるのも、採用戦略のメリットです。

企業規模や目的別の採用戦略のポイント

企業規模や目的別の採用戦略のポイント

中小企業、スタートアップ、新卒、中途と採用活動を行う企業の規模や採用活動の目的別の採用戦略のポイントを解説します。

ポイント1:中小企業はWeb採用を取り入れる

中小企業庁発表の「中小企業・小規模事業者の人材確保・定着」によると、採用手法として「ハローワーク」「教育機関の紹介」「知人・友人の紹介」「取引先・銀行の紹介」とアナログな手段をもちいている中小企業が多い傾向にあります。一方近年の求職者は若年層を中心にWebを活用した求職活動が一般的です。

中小企業は求職者を集めるために、転職サイトや自社ホームページ内の採用サイトを制作するなどWeb上での採用手法を取り入れることが求められています。

ポイント2:スタートアップはコストバランスを考える

スタートアップ企業の場合、採用活動へ使える資金が潤滑ではないことが多いです。コストをおさえるために採用コストを抑えつつ採用マッチング度が高い人材に直接アプローチする方法を活用しましょう。「リファラル採用」「ダイレクトリクルーティング」などの採用手法が有効です。

ポイント3:新卒採用は採用期間を早めに

近年新卒採用の活動時期が前倒しとなっている傾向にあります。大学1年生から説明会やインターンシップに出向く学生も多く、インターンシップからそのまま内定、という流れもあります。募集対象を大学4年生に限定すると優秀な人材は内定が決まってしまっていることもあるため、新卒採用では採用の時期を早める、対象を広げるなどの対策が必要となります。

ポイント4:中途採用は採用広告や媒体選びが重要

中途採用は、すでに実務経験やスキルを持っている即戦力人材を獲得するチャンスとなります。中途採用の採用戦略手法にはいろいろなものがありますが、とくに有効なのが適した採用媒体を選ぶことです。転職サイトや人材紹介会社は幅広くあり、得意としている業界や職種は媒体によって異なります。自社の業界や職種に合致した媒体を選び、SNSを活用するソーシャルリクルーティングや、オウンドメディアリクルーティングなどを併用すると良いでしょう。

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採用戦略を立てる8つのステップ

実際に採用戦略を立てるときの流れを、8つのステップに沿って解説します。

ステップ1:採用戦略を実行するチームを作る

採用する人材は自社に利益をもたらす可能性のある、いわば企業の財産とも言える存在です。採用活動を人事部のみに丸投げするのではなく、人材を求めている現場の責任者や経営陣も巻き込み、専門チームを作りましょう。チームで自社の現状や事業戦略、事業展開などをふまえ、会社全体としての採用活動の方向性を明確にしたうえで、採用戦略を立てていくことが重要です。

ステップ2:現状を分析する

採用をめぐる自社、求職者、求職市場を分析することで適切な採用手法やターゲットの設定などに役立ちます。採用戦略における現状分析には、募集対象を明確にするターゲティング分析、ペルソナ設計など、マーケティング領域のフレームワークを活用する方法もあります。

ステップ3:募集部署の声を聞く

各部署の担当者にヒアリングを行い、必要となる人員数や望ましい人材(能力、年齢、性別など)の現場の声を聞くことで、現場が求めている人物像の把握につながります。直近で発生する可能性の高い退職人数の共有を行うことで、スムーズな採用活動を展開できるでしょう。

また、面接の際には人事担当者だけでなく募集部署の担当者に同席してもらうと、業務に関する専門的な質問ができます。

ステップ4:採用するターゲットを決める

人柄、考え方、保有スキル・経験などをふまえ、採用したい具体的な人材のターゲット設定をします。条件はこまかく設定するのではなく、絶対に外せない「MUST条件」と、あると望ましい「WANT条件」、外したい条件の「NG条件」に分けて設定しましょう。

ターゲット設定がうまくいかない場合は、実際に自社で活躍している人材の入社前を調査するのも有効です。ヒアリングやアンケートを活用してみましょう。

ステップ5:採用のスケジュールを立てる

採用期間に充てる期間に応じた採用活動のスケジュールを決めます。

  • 短期的な計画…各部署にいつまでに・どれくらいの人員が必要なのか、退職者や求職者がいつ出るかをヒアリングする
  • 中長期的な計画…新規プロジェクトの指導予定、売上予想額、人件費などから必要な人員と予算から慎重に計画を立てる

採用期間の目安は採用したい人材によって異なり、役職を持たない一般職は2ヶ月〜、幹部クラス人材は1年以上かかることもあります。

立てた採用スケジュールは社内での採用活動だけでなく、求職者にも応募から採用のフローとして共有すると、安心感を与えられるでしょう。

ステップ6:採用手法の決定

具体的な採用手法を決めます。採用対象が新卒か中途か、求める経験やスキル、コスト、スケジュールなどで適切な採用手法は異なります。おもな採用手法は以下の通りです。

  • 求人広告
  • 人材紹介
  • 合同企業説明会
  • イベントやセミナー
  • リファラル採用
  • ダイレクトリクルーティング
  • オウンドメディアリクルーティング
  • インターンシップ(新卒採用が主流)

ステップ7:採用戦略を社内で共有する

採用戦略を立てたら、採用戦略を社内で共有します。採用活動は会社全体で取り組むためです。採用戦略のチームが主導で活動を進めるとしても、採用するターゲットとなる人材、採用の手法、いつまでに採用するかなど、目標は社内全体で共有するようにしましょう。

ステップ8:採用後のフォロー

採用活動を進め、新人社員が決まった後は離職を防ぐために採用後のフォローを行います。新人社員にメンターをつけてフォローアップを依頼する、入社後1カ月おきに面談をして不安点を聞き出す、1on1ミーティングを実施するなどのフォローが有効です。あらかじめ新入社員が気軽に相談できる仕組みや雰囲気を作っておくのも重要になります。

中小企業が採用戦略を行うときに注意したいポイント

中小企業が採用戦略を行うときに注意したいポイント

中小企業が採用戦略を成功させるために、注意すべきポイントを解説します。

求職者目線での自社の強みや魅力を知っておく

社員ではなく求職者の目線からの自社の強みや魅力を踏まえておけば、自社のセールスポイントとして大きくアピールできます。以下の内容を整理したり、募集している部署からヒアリングしたりして、どのポイントが求職者にとって競合よりも魅力を感じられるかを把握しておきましょう。

  • 仕事内容
  • 給与
  • 雇用条件
  • 福利厚生
  • 職場の雰囲気
  • 仕事のやりがい
  • 仕事を通して得られる スキルなど

採用の方向性を明確にする

事業計画と人材の育成計画をふまえて、採用活動の方向性を明確にしておきましょう。たとえば新卒採用の場合は会社の将来の幹部候補になり得る人材を長期的に育成していく戦略が必要です。一方で、中途採用の場合は会社にとって緊急のニーズを満たすために、その分野の経験がある即戦力を採用する戦略が必要です。

自社の経営状態に合わせた採用活動をする

新しく人材を採用すれば当然人件費が増えます。余計な人件費を増やすことは経営にとって悪影響となりますが、業務量に対して人材が足りないと事業計画の進行や業績に悪影響となります。

自社の経営状態を確認し、適切な採用人数とかけられる人件費を決めたうえで採用戦略を立てる必要があります。

担当者や面接官のスキルを上げる

優れた採用戦略が立てられたとしても、施策を実行する担当者のスキル不足により計画通り進められないことがあります。採用担当者のスキル不足に加えて、担当者本人が雑務や社内外の関係者とのコミュニケーションなど、多くの業務を抱えていることも原因の一つになることがあります。。担当者のスキルを高め、的確に戦略を実行に移せる体制を作り上げるほか、採用活動の人的なリソース不足の場合には対策を考えなければいけません。

さらに面接官の質は採用活動の成果に影響します。実務能力やコミュニケーション能力をアピールする応募者と受け答えをしながら、応募者の性格や将来性なども正確に見定める能力が、面接官には必要です。さらに、自社の魅力を応募者にアピールして入社の動機づけをする役割も担っています。場合によってはオンラインの面接に対応できるスキルも必要です。もし面接官のスキルが不足している場合には、面接官を育成する計画も立てなければいけません。

効果検証を行う

採用戦略の実施後は、必ず効果検証を行い次回に活かしましょう。改善すべきポイントの洗い出し、改善方法を決めて採用戦略を実施、そしてまた改善ポイントを洗い出す…というPDCAサイクルを回し続けることで、効果的な採用戦略が構築できます。

採用活動は長期にわたるため、施策の実行と改善を繰り返すのが重要です。特にIT業界など移り変わりが早い市場での採用戦略は、PDCAサイクルが効果的となります。

採用戦略の立案が自社で難しい場合は「まるごとバックオフィス」へ

「採用活動の人的リソースが足りない」「採用担当者や面接官のスキル不足」「採用戦略を立てても早期退職やミスマッチが発生する」など、実際に採用戦略の立案や効果的な採用活動を行うのは難しい場合があります。自社で採用戦略の立案ができない場合は、外部サービスを活用するのも有効です。

たとえば「まるごとバックオフィス」なら採用戦略の立案をはじめとした人事業務のサポートをまとめて依頼できます。採用活動はもちろん、採用後の新入社員の教育やフォローなどもお任せできます。人事のほか総務や会計など、自社内で課題のあるバックオフィス業務を依頼できるのもメリットです。ぜひご検討ください。

効果的な採用戦略で獲得した人材は企業の財産となる

効果的な採用戦略で獲得した人材は企業の財産となる

採用戦略を立てる目的やメリット、採用戦略を立てる流れと注意点を解説しました。自社の利益をもたらす人材を採用するためには、採用戦略を立て社内で共有するのが重要です。採用戦略をもとにした効果的な採用活動を経て、会社の財産となる人材の獲得を目指しましょう。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。