経理業務を自動化する方法とは?自動化できる業務とそのポイントについて徹底解説!

経費精算から報告資料作成まで、業務範囲が広い経理業務の効率化を図ろうと、ツールやシステムの導入を行い、自動化を進める動きが企業の間では主流になってきています。ただ、経理業務を自動化することにメリットがあるのか、自動化が可能な業務範囲は?などが不明点が多い人もいるでしょう。この記事では経理の自動化について重要なポイントを多角的にまとめました。具体的な方法も紹介しているので参考にしてください。

経理業務の自動化がすすむ背景

経理業務の自動化が目指されるトレンドが生まれたのには背景があります。経理業務はバックオフィスの仕事とよく言われ、経理は事業活動を進める上で発生した収入や支払い、取引などのお金の流れを正しく記録する業務です。

経理の業務の自動化が進められてきているのは、経理の効率化と正確性の向上が重要だからです。経理の仕事は請求書や領収書などに基づいてワンパターンに処理できるものが大半を占めています。証憑があれば自動化できる内容が多いので、あえて人が行う必要はありません。また、人が処理するとヒューマンエラーが起こるリスクがありますが、一義的に処理できる内容なら機械に任せれば正確に対応できます。

経理には領収書の内容を見て帳簿に複製するといった無駄な作業が多いため、自動化してしまった方が経理の効率を向上させられるのは明らかです。現代では人のリソースが不足している傾向が強く、いかに業務効率を上げて人がやらなければならない業務にリソースを投入するかが課題になっています。経理の業務にはルーチンワークが多く、自動化しやすい性質があるため積極的に推進されています。

自動化が進む経理業務

経理の自動化はツールの開発によって活発に進められるようになっています。特に以下の4つの項目についてはツールを利用すれば簡単に自動化できるのが現状です。

入金消込作業の自動化

入金消込は売掛金と入金の間に差異がないかを確認していく作業です。先に商品の納品を行い、翌月末の一括払いで支払いが発生した際には売掛金が発生します。取引上では商品取引の契約が成立して納品した時点で売上になりますが、キャッシュが入金されるまでは取引が完了しません。入金消込作業として必要な銀行口座の明細チェックは処理の自動化ができるようになっています。

帳簿の仕訳入力の自動化

帳簿の仕訳入力は自動化が進められるようになりました。銀行の取引情報やクレジットカードの明細、レシートの記載項目などによって勘定項目を自動的に判定して帳簿に入力できます。区分や科目などの自動仕訳ルールを設定できることに加え、自動学習も取り入れられているのが一般的です。利用を継続していき、ミスを正していくことで正確な仕訳入力を自動でできるようになります。

経費精算処理の自動化

経費精算は経理が一つずつ証憑を見ながら支払いをするという対応方法を取る企業が多く存在します。しかし、昨今の経費精算はツールを導入することで効率的な自動化ができるようになっています。例えば、交通費精算の場合、出張の往復経路とICカードや領収書などのデータを自動で照らし合わせて、正しい内容かどうかを判断するシステムがあり、容易に自動化できるようになっています。。

各報告書の作成の自動化

経理では転記作業が多いのが無駄に業務量を増やしている原因です。見積書や納品書や請求書のような取引の基本になる書類から、会計月次報告書や決算書までツールを利用することにより自動で作成することが可能です。転記するか、簡単な計算をするだけで報告書や決算書は作成できるため、比較的初期から自動化が達成されている経理業務です。

自動化できない経理業務

経理業務の中には自動化が困難な業務もあります。どのような業務は自動化が難しいのか以下にて紹介します。

イレギュラーで人間が介入すべき業務

自動化の技術は一定のルールに従って単純な形で処理できる仕事である場合に、ツールによる自動化が可能です。イレギュラーなことへの対応力は高くないので、経理の専門知識がある人が介入しなければならない対応には自動対応は適していません。特に自動化によってエラーが発生したときには機械に対応を求めるよりも人が処理した方がスムーズです。例えば、二重請求をしてしまった場合には、先方にお詫びをして調整や書類の修正をする対応が必要になります。このようなケースは、機械よりも人が臨機応変に且つ迅速に対応した方が取引先への印象も良く、ビジネスに与える悪影響を最小限に抑えられます。

ルールや仕様変更が多い業務

経理業務は基本的にはルールや仕様に従って進めます。しかし、ルールが変更されたり、請求書や発注書の様式が一度変わると、その変更があるたびに設定を変更して、現状のルールや仕様に合わせなければならないため大変です。。例えば、IPOに向けて内部整備をしている企業では、各種書類のフォーマットを変更したり、会計報告書の記載項目を調整したりすることがよくあります。経費精算のプロセスも変更となると、経理業務全体が変わることにもなります。業務内容が安定した段階で自動化を進めるのが無駄を減らすのに効果的な対策です。

経理業務を自動化するメリット

経理業務には自動化できない部分もありますが、できるところから進めた方が良いでしょう。経理業務を自動化するメリットを確認しておきましょう。

確認・作業時間をスリム化できる

経理では自動化によって確認や作業にかかる時間をスリム化できます。人が一つずつ丁寧に証憑の内容を帳簿に転記するよりも、機械で自動的におこなった方が圧倒的に作業時間が短くなります。確認作業も自動化すれば、2人の時間工数をかけてダブルチェックを行うよりも、1人の経理職による最終チェックだけで済ませられるようになります。

コスト削減につながる

経理業務を自動化すればコスト削減になります。経理業務は企業にとって欠かせないバックオフィス業務ですが、利益を生み出す行為ではありません。いかに無駄なコストをかけずに正しく業務を進めるかは重要課題です。自動化によって少ない人数で経理部を構成でき、業務の効率化が進むことで残業なしで業務を終えられるようになれば結果的に人件費を削減できます。

人為的ミスによる被害を回避できる

自動化は転記ミスや帳簿の記入漏れ、請求書や領収書などの見落としといった人為的ミスの防止になります。膨大な量の情報を処理していると人は疲弊してヒューマンエラーを起こすリスクが高くなるのが問題点です。しかし、自動化をすれば単純作業がすべて機械により正確に処理されるため、人為的ミスによる被害のリスクが低くなります。

人材を生産的な業務に活用できる

経理業務を自動化し、これまで経理職の人材を生産的な活動を行う職務に携わってもらうことで収益の底上げに繋がる場合もあります。例えば、予実管理の仕組み作りや財務管理による資金効率の向上案の策定を行う担当に配置するなど、企業経営を直接的に支える業務に従事できる時間を確保することが可能です。優秀な人材を生かして企業の成長につなげられるのが経理を自動化する重要なメリットです。

経理業務を自動化するデメリット

経理業務を自動化するのにはデメリットもあります。自動化をすることで起こりうる問題や気をつけるべきポイントについてここでご紹介します。

マニュアル作成や教育の手間がかかる

経理業務の自動化にはシステムやツールの利用が必要です。経理職の人だけでなく、従業員全員がシステムを使わなければ自動化できない部分もあります。従業員向けのマニュアルを整備したり、研修の機会を設けて教育したりするのに手間も時間もかかります。経理職の人も使い方の教育を受ける必要があり、今までとは違うやり方に慣れるのに時間が必要になりがちです。

最終チェックは人間が行う必要がある

最終チェックまですべてをシステムに任せて自動化できないのもデメリットです。完全な自動化は現状としては困難とも言われており、あくまで自動化のシステムではあらかじめ設定する処理を行うだけになっています。設定に些細なミスがあり、交通費精算の支払いが別の従業員におこなわれてしまうことも0ではありません。学習機能が搭載されていても、安定して正しい処理が行われるようになるまでには時間がかかる点も事前に知っておくべきポイントです。

システム導入に伴う費用が発生する

経理の自動化にはシステム導入費がかかる点もデメリットと言えます。会計システムや経費精算システムなどを導入しなければ業務を自動化することはできません。初期費用は比較的抑えられるツールも中にはありますが、サブスクリプション型の月額料金を支払い続ける形式のツールが多く、払い続けることで費用が積み重なる可能性もあります。自社で社内システムを開発すると開発費用が高くなり、サーバーの運用コストなどもかかります。いずれの場合もある程度の費用がかかる施策であることの認識が必要です。

経理業務を自動化する前に確認するべきポイント

自動化するためのシステムを導入するときにはあらかじめ確認しておいた方が良いポイントが4つあります。経理業務の自動化を始める前に以下の点を十分に検討しておきましょう。

自動化にかかるコストを算出しておく

システムを導入したときにかかるコストを具体的に確認しておきましょう。システムの料金を確認したり、見積もりを取るなどして初期費用と運用費用を算出しておくのが大切です。マニュアル作成や従業員の教育にかかるコストも加味して、費用対効果が上がるかどうかも試算しましょう。

業務を洗い出し工程を可視化する

経理業務の自動化を行うときには現場でどのような業務が発生しているかを洗い出すことが大切です。経理フローを可視化して何を自動化したら効率が上がるのかを検討しましょう。自動化が達成された後の経理フローも作り、そのフローが現実的に運用できるかも考えた上で自動化の実施に踏み切るのが重要なポイントです。

※経理業務のフロー図作成についてはこちらの記事も参考にご覧ください

経理業務効率化につながる業務フロー図とは?作成ポイントや方法、おすすめのツールを解説

自動化する業務の優先順位を決める

経理には自動化できる業務がたくさんあります。できる限り自動化するのが理想的かもしれませんが、対応範囲が広いシステムほどコストも高くなりがちです。本当に自動化がメリットになる業務から優先順位を付けていき、どこまで自動化するかを決めると費用対効果の高い形でシステムを導入できます。

空いた時間の活用法を想定する

業務効率化によって経理職の人員リソースに余裕が出た場合には、そのリソースを有効活用するのが重要なポイントです。リソースをどのように活用するかをあらかじめ計画しておきましょう。残業時間がなくなった、という事実だけでも作業が効率化されたという良い結果です。一方で時間を持て余すほどに時間に余裕が出てきたときのために、割り当てる業務を先に検討しておくことが大切です。

経理業務を自動化する方法と必要なツール

経理業務を自動化する方法とはどのようなやり方があるのでしょうか。ここでは経理の自動化のアプローチとして代表的な方法を4つご紹介します。自社に最も合う方法を選んで自動化へのプロセスを検討してみてください

Excelを活用する

経理業務ではExcelがよく用いられています。収入や支出を記録したり、帳簿を作成したり、会計や経理の情報をグラフにして可視化するのに使われているのが一般的です。しかし、Excelはマクロを組むことで一定の操作を自動でおこなえるようにできます。さらに、Pythonを使ってプログラムを組めば複数のExcelファイルを連携させて自動処理することが可能です。

システムを導入する

経理システムや会計システムを導入すれば自動化できます。ソフトウェアとして販売されているシステムを購入するインストール型はオフラインでも利用できるのが特徴です。購入に初期費用がかかりますが、月額費用はかからないのが一般的です。一方、クラウド型のシステムの場合にはオンラインで利用する必要があります。導入費用は安い代わりに月額費用を支払う負担が大きいのが特徴です。

RPAを導入する

RPAの導入はルーチン化されている作業を自動化するのに適しています。経理業務をプログラム化してロボットにより自動処理できるようにするアプローチです。情報の転記や帳簿からの資料の作成などのように一義的にできるプロセスを正確にできる魅力があります。繰り返し発生する業務を期日通りに正しくおこなえるシステムとして有用です。

経理業務をアウトソーシングする

経理業務をアウトソーシングし、業務効率化を図るという方法もあります。アウトソーシングは業務を外部に委託する方法で、委託先に具体的な業務を全てやり方も任せることができる点が特徴です。事業内容や企業規模ごとに経理業務の課題は異なります。アウトソーシングをすると経理業務を一括して外部に任せることが可能となり、特定分野のプロが対応することから、効率が高く、ミスの少ない最善の方法で対応してもらえます。業務プロセスのルールや書式の変更があった場合にも臨機応変に柔軟な対応を行なってもらえる可能性も高いため、ツールによる対応に比べて「人」が対応することのメリットが大きい方法です。

※まるごとバックオフィスでは、経理業務のアウトソーシングを請け負っております
また、クラウドツール導入による経理・会計業務の効率化・業務改善コンサルティングにも対応しております

まとめ

経理の自動化は業務効率を上げて人的リソースを有効活用する方法として注目されています。RPAやツールによって自動化を進めることはできますが、導入の初期に費用も教育も必要になるのが大きなハードルです。アウトソーシングは経理の外製化によって効率を上げられる魅力的な方法です。経理の自動化のアプローチとしてアウトソーシングも検討してみましょう。

記事の監修者

【中小企業バックオフィス体制づくりのプロ】

株式会社バックオフィス・ディレクション 代表取締役 稲葉 光俊

中央大学経済学部経済学研究科(大学院)卒業後、事業会社にて管理部門のマネージャーとして株式公開(上場)準備作業を経験。 中小企業の成長に欠かせないバックオフィス部門(総務、労務、人事、経理、財務、法務、広報等)を責任者として統括し、事業会社の社内整備と仕組みづくりを行う。 2022年株式会社バックオフィス・ディレクションを設立し、地方中小企業を対象としたバックオフィス強化のためのコンサルティングやクラウドを活用したDX化および業務アウトソーシングを主にしたサービスを提供し、伴走型支援に力を入れている。